多様性を活力として協働する「知のプロフェッショナル」の育成
次に、日本のベンチャーエコシステムの課題として、冨山氏は知識の集約度も資本の集約度も高い領域での成功例がないことを挙げた。この問題は、日本ではエリートがチャレンジしない国であることに起因する。大企業や研究機関といった組織に従属するのではなく、東大の五神総長のいうところの「知のプロフェッショナル」というアイデンティティを持ってチャレンジしていくような人材が必要である。
大企業や大学・研究機関においては、閉じた同質的組織という日本的なモデルを打破しなければ、トップのベンチャーがバイアウトする先として魅力的な組織になり得ない。また、経営力は決断力と実行力の掛け算であると考えると、日本の組織は決断力に問題がある。「あれもこれも」と過剰にすり合わせる文化は良い場合もあるが、イノベーションの世界では「あれかこれか」をかなり鮮烈かつ迅速に決めていかないといけない。冨山氏は、この問題を乗り越えることが、日本の大企業が持っている素晴らしいベースの上にイノベーションの力を乗せ、掛け算の力で大きな力を発揮する重要なポイントであるとし、最後に以下のように呼びかけた。