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最適な「チームサイズ」と「マネジメント」を科学的に裏付ける良書『超チーム力』

『超チーム力:会社がかわるシリコンバレー式組織の科学』

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チームの最少ユニットは「ペア」なのか「トリオ」なのか?

 前項では、チームの最少ユニットである「ペア」のパターンを紹介しました。では、なぜ「トリオ」をさらに紹介するのか。それは「短期限定」であれば、“舵取り”は難しいがペア以上の効果を発揮するトリオが存在するとしており、トリオでの取組みが仮に失敗に終わったとしても、その失敗を糧に新ペアを作れるとしています。では、ペアと同様に、機能するトリオの4タイプとトリオを管理する“4人目のメンバー”であるマネジメントの役割に言及した部分をピックアップしてみましょう。

・1.0:「2+1」トリオ

 パターン名のとおり、「ペア+1」の構造を持つトリオで、強みはペアとして機能しながら、第三者としての3人目が相談役や専門家として活躍する組み合わせだとしています。

・2.0:「パラレル」トリオ

 「1人のメンバーを共有する2組のペア」のことで、A,B,Cの3名であれば、Aを中心に、A+B,A+Cという活動をするトリオで、B+Cのペアにはならないトリオだとしています。このトリオのリーダーは当然ながらAになり、Aの示す方向性を、BとCが違う領域で役割分担して、目標に邁進するスタイルであるとしています。

・3.0:「シリアル」トリオ

 「パラレル」トリオとは違い、特定の中心メンバーとのみペアを組むのではなく、順番にさまざまなペアを組む性質を持つとしています。「パラレル」トリオの変形版とすると理解しやすいと思います。

・4.0:「インストゥルメンタル」トリオ

 明確に定義された役割を持つ3人が、同じく定義された1つのタスクに取組みチームで、4つのパターンの中で最も一貫した成果を上げることができるとしている。

「トリオ」ユニットの成功に欠かせない、職人芸としての「トリオ管理」能力

 ペアと同等、いやそれ以上に重要だとしているのが、「トリオ管理」を行うマネジメントの存在です。その管理の肝として、それぞれのトリオごとの教訓を説明しているので一部を紹介しましょう。

 「2+1」トリオの場合には内部亀裂の問題は発生しづらく、ペアに第三者としての1名が加わっているので、平等に評価をしてはいけない。しかし、第三者はそれなりの経験を積む専門家であることが多いので評価が難しく、亀裂が発生するのは「評価への不満」が原因になるとしています。

 「パラレル」トリオの場合には、中心メンバーに依存するスタイルなので、そもそも突出したメンバーを確保することが必要で、中心メンバーを別の角度からフォローする残り2人の役割の異なるメンバーが必要だとしています。中心メンバーではない2人の相性は気にしなくていいとしています。

 「シリアル」トリアの場合は、プロジェクトの進捗のフェーズによりペアが変わるので、初期のペア、中間のペア、最後のペアとある場合に、最後のペアの成果(もしくは、責任)として評価することが、トリオを崩壊させる要因になるとしています。

 「インストゥルメンタル」トリオの場合が、一番効果を上げやすいトリオですが、自然発生的ではなく、より意図的にチームメンバーを探し、作り、管理する必要があるとしています。具体的に気をつけるべきことは、「常に最高レベルの生産性と連携を要求する」「タスクに必要なリソースが不足しないように留意する」「成功した時には、3人の参加者に惜しみない評価を平等に与える」ことが、大事だとしています。

 本書は、私が今まで読んできた「チーム論・組織論」を語った書籍のなかでも突出しており、かつこれからの組織に関して、多くの洞察を科学的な裏付けと共に解説した良書です。チームの典型的なサイズの「7±2」チーム、「15±3」チームを解説した9章、企業の標準的な組織サイズである「50±10」チーム、「150±30」チームや最大規模となる450人から1500人のチームを語った10章、チームのライフサイクルを語っている11章が、本書の中核となっているように思います。是非、今回ピックアップしていない部分も含めて読んでいただくことをおすすめします。

『超チーム力 会社が変わる シリコンバレー式組織の科学』

『超チーム力 会社が変わる シリコンバレー式組織の科学』

[はじめに――チームの力]
・勝てるチームを作るための20の質問
・チームにまつわる知られざる新事実
・チームマネジメントの四つのポイント
[第1章 変化は猛毒 正しいチームで毒を制す! ]
・保証のない二つの戦略
・機動性を征服する
・アップルの復活劇
・スティーブ・ジョブズ再考
[第2章 チームに隠された魔法の数字]
・チームがチームである理由
・理想的なチームサイズとは?
・100人よりも7人が強い理由
・ダンバー数150と1500の謎
・ヒューレット/パッカードが知っていたこと
・チーム・サイエンス――ビッグデータの活用
[第3章 新しいチーム科学]
・脳は「協力・改善」しようとする
・人はなぜ血縁を超えて協力するのか
・仲よしは成功の秘訣
・社会規範と最後通牒ゲーム
・オキシトシン――愛情ホルモン
・ミラーニューロンの不思議な力
・「私たち」対「私」
・直感はどこからやってくる?
・迷ったときはハグしよう
・チームは最高の健康法
・リアルタイムでチームを評価する
[第4章 違いの力]
・喧嘩を売ってはいけない社員
・認知的多様性が持つパワー
・ダイバーシティは諸刃の剣
・フレーミングの効果
・向多様性を育てる
[第5章 最強のチームの育て方]
・プロセスの損失を食い止める
[第6章 チームの基礎]
・チャンピオンを育てた二人の名コーチ
・ペアリングの不思議
[第7章 ペア 12+5タイプのパートナーシップ]
・「場面」によって定義されるペア
・「類似性」によって定義されるペア
・「差」によって定義されるペア
・「不平等」によって定義されるペア
・ペアを機能させる方法
・仲人としての仕事
[第8章 トリオ 不安定な関係]
・機能するトリオの4タイプ
・トリオ管理という職人芸
[第9章 チームの典型 中規模サイズのケーススタディ]
・機能性のスイートスポット
・7±2チーム
・15±3チーム
[第10章 チームから組織へ]
・50/150チームの結成と管理
・四五〇人~一五〇〇人超えの超大型チーム
・中間地点に注意せよ
[第11章 チームの誕生と寿命]
・リーダーシップの在り方
・チーム精神
・チームのライフサイクル
・結成の段階
・設定の段階
・活動の段階
・文化形成の段階
・持続可能の段階
・成熟と統合の段階
[第12章 チームの引退と死]
・事後の段階
・偉大なチーム

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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