ビジネスの課題を解決したIoTプロジェクトの成功事例
ここで武下氏は、IoTプロジェクトの具体的な事例を紹介した。
一つ目は、「いつでもどこでも購入可能で、いつでもどこでも受け取れる」というオムニチャネルの理想を実現する「スマート宅配BOX」というものだ。ECサイトとモバイル機器の普及により、購入はできるようになった。しかし受け取りでは制約がある。自宅は常に不在がちで、店で受け取るにしても所在地や営業時間の問題がある。会社で受け取るのも、総務に届くので毎回申し訳ない。
スマート宅配ボックス
そこで考えたのが、スマートフォンが鍵になる宅配ボックスだ。玄関先などに置き、品物を届ける際、受け取る際、それぞれがスマホをかざすことでボックスを開閉する。
現在、この製品は一般には販売していないが、羽田空港の国際線で、グローバルWiFi(R)の貸し出しに使われている。プロトタイプと導入が別になったという事例になる。
運営しているのは株式会社ビジョンで、課題は「グローバルWiFi(R)受け取り時の混雑解消」と「複雑なオペレーションの改善」だった。特にお盆と正月に、Wi-Fiのレンタルカウンターは滅茶苦茶に混む。来店した客を対面で本人確認し、端末と付属品を確認してから受け渡すまでには、どうしても一定の時間がかかる。混雑時には行列で30分以上待たされることもあり、出国時間が限られているユーザーから、クレームになることも多い。
そこで与えられたミッションが「無人受け取りが可能になるボックス(ロッカー)」だった。ユーザーは旅行前にネット予約し、空港に着いてロッカーにスマホにダウンロードしたQRコードをかざすとドアが開き、WiFi端末と付属品を取り出すことが出来る。
ロッカーは既存のアルファロッカーシステム社の製品を採用し、QRコード読み込みと、ドア開閉を制御する機能を追加した。さらにエスキュービズムのコアモジュール(Orange DBなど)を使い、ビジョン社の既存基幹DB(予約管理システム)とロッカーが連携できるよう調整している。
導入効果だが、有人カウンターで平均15~20分かかる受け渡し時間を、最短30秒に短縮している。しかも24時間受け取り可能だ。