組織内外における「文脈の共有」によって、コラボレーションの成否が左右される
乗り越えるべき課題は大きく2つあるように思われる。1つ目は、いかにして組織は構造的に作られたタテとヨコの分業システムに制約されず、コラボレーションを促進できるのか、という課題である。2つ目は、いかにして組織は事前決定の精度に固執せず、経験を通じて学んだことを活かすことが出来るのかという課題である。
1つ目の「コラボレーション」に関しては、ハーバード大学のヘンリー・チェスブロウが提唱し大きく広まった「オープン・イノベーション」の議論が、コラボレーションの威力を広めるうえで大きなインパクトを与えた。オープン・イノベーションの議論がもともと問題としていたのは、組織において新しいイノベーションの種が芽生えはじめても、組織の壁に阻まれて十分に育つための資源配分を受けられないことであった。だが、そうしたイノベーションの種は、外部のプレーヤーとのコラボレーションを通じて、組織の様々な制約を受けずイノベーションを起こしていくようになった。このような変化は組織内の変化だけではなく、様々なコラボレーション環境が組織の外部にも育ってきているからでもある。