『イノベーションのジレンマ』にある指摘を“教科書どおり”に抱えている日本企業に光明は差すのか?
ハーバードビジネススクールのクリステンセン教授が「The Innovator’s Dilemma」(邦題『イノベーションのジレンマ』)を発表してから20年以上が過ぎようとしています。この本が2001年に日本で出版された当時、国内はITバブルの真只中であり、イノベーションに対する切迫度が低いため、あまり注目されなかったそうです。そして、ITバブルが崩壊して15年以上経過したいま、各社がイノベーションの創出、新規事業開発に苦労されています。もっとはっきり言うと「ディスラプティブイノベーション」はほとんど生まれていません。ゆえに、改めて「イノベーションのジレンマ」が注目されています。
多くの既存企業は平成バブルの崩壊により「本業に回帰する集中戦略」をとったため、本業を中心とするコスト構造を見直し、オペレーションエクセレンスを追求しました。そして、株主は、経営者のそのような短期的な行動を評価し、経営者はますます既存顧客の声を注意深く聞くようになっていきました。当然、経営者は社員にそのような行動を奨励し、オペレーションエクセレンスを評価するようになっていきます。
その結果、日本のほとんどの既存企業が『イノベーションのジレンマ』で指摘されているイノベーションを起こせない状態になってしまったのです。また、指摘されている課題を“教科書どおり”に抱えられています。その課題を「認識できていない」、もしくは「認識できていても、無意識に正しく認識できない」、さらには「認識できていても、意識的に認識しない」状態に陥っています。実は課題は複雑なのです。
本連載は、オープンイノベーションブームの最前線にいる著者グループが各企業で現実的に起こっている事例を参照し、本連載を共著していただく、慶応大学大学院政策メディア研究科の村上恭一教授とともに課題の真因を浮き上がらせてまいります。そのうえで、多くの日本企業が『イノベーションのジレンマ』を正しく理解され、そして認識され、イノベーションを起こすために実行し、日本経済の復活に少しでも貢献させていただくことが目標です。