ジョブ理論とマーケティング
新商品開発、つまりプロダクト・イノベーションや新規事業開発(ビジネスモデル・イノベーション)以外の場面でもジョブ理論は有効である。クリステンセン氏が繰り返し語るミルクシェイクの逸話は、既存の商品をもっとたくさん顧客に届ける示唆を与えてくれる(ミルクシェイクの逸話についてはこちらをご覧頂きたい)。デモグラフィック(人口統計学的)属性でミルクシェイクを購入する顧客を見ていくと、週末も平日も同じ中年男性だが、ミルクシェイクを購入するために解決するジョブはまったく異なる。週末、子供にご褒美のようにあげるミルクシェイクと、朝の通勤時、手持ち無沙汰を解消するミルクシェイクでは「売り込み方」が変わってくる。このようにジョブに直結するように商品を訴求した方が、効果が高いことは理解して頂けるだろう。
ジョブ理論と間接部門
人事や総務、社内IT部門など、いわゆる間接部門は、ある程度の規模になればどの企業にもある。そこまで不可欠な業務機能を持ちながら、「間接」という響きとともに軽視されているのではないだろうか。その原因は、これらの間接部門の「機能」は明確になっているにもかかわらず、サポートするべき事業部のジョブが曖昧になっていることにある。企業が成長し、複数の事業部をサポートするようになるにつれて、元の事業から距離ができてしまい、部門が果たす機能が標準化されてしまったという経緯が背景にあることが多い。間接部門を社内サービス部門として見直し、サービスの提供先である事業部のジョブを理解することから業務改革に成功した事例もある。