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i.lab流イノベーションマネジメント

ルノー・日産三好氏が語る、業界の常識を疑う「人間中心イノベーション」視点での発想法

【特別鼎談】ルノー日産 三好健宏氏 × i.lab 横田幸信氏 × 寺田知彦氏 前編

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 日本の大企業が新たな価値を創造し続けることにおいて、どのような可能性があるのか、そのために何が必要なのか──。本連載では、イノベーション創出・実現のためのコンサルティングファームである「i.lab」の気鋭の4名(横田幸信氏、新隼人氏、村越淳氏、寺田知彦氏)による、企業内の事業開発担当者との鼎談により、大きな組織に効果的な「イノベーションの手法」を探る。  今回は、ルノー日産で新しいチャレンジに取り組んでいる三好健宏氏をゲストとして迎え、自動車業界におけるイノベーションについて意見交換を行なう。前編では、三好氏のキャリアから、イノベーションを生み出す発想を得る手法や、逆に障壁となるものなどについて伺った。

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“非連続なイノベーション”のために必要となる「前提となる常識を疑う」マインドセット

横田(i.lab Managing Director):
 自動車産業は長きにわたり、ガソリンエンジンなどを中心とする連続的イノベーションを行ない、競争を続けてきました。しかし、近年になって電気自動車や自動運転といった非連続または破壊的イノベーションが進行しつつあり、今度は産業構造の大改革が求められる可能性が示唆されています。三好さんはそうしたイノベーションの担い手として、注目を集める一人です。まずは自己紹介を兼ねて、これまでの経歴などをお話しいただけますか。

三好(ルノー日産アライアンス コネクティドカー&モビリティサービス事業部 主担):
 新卒で本田技術研究所に車体技術エンジニアとして入社し、最初の5年間程は要素技術研究に携わっていました。役割としては量産車を作るための信頼性検証やVA技術開発が3割、新技術研究やF1のような極限への挑戦が7割といったところでしょうか。昔は手を挙げた人にテーマリーダーを任されることが多く、当時からかなり権限を委譲されることが多かったですね。まるで個人事業主のようで、もう少し会社としてコントロールしてもらえないかと不遜にも思っていたこともあります(笑)。成果として求められていたのが「社会的インパクトを与える新商品の開発」というような広義でのイノベーションで、常にそれを念頭に様々な技術開発に取り組んできました。ここ数年は自動運転によるイノベーションがテーマになっています。

横田:
 初めてお会いしたのは、文科省のイノベーション教育プログラム「EDGEプログラム」のコンペティションにご応募いただいた時だと思います。これって、完全に個人によるご応募ですよね。社内でも7割はイノベーションに関わるお仕事をなさっているにも関わらず、社外でも精力的に活動なさっている。それがとても印象的でした。

三好:
 どうしても社内では「現在の業務」が主体ですから、突き抜けたイノベーションについて語り合える人というのがいないのが悩みだったんです。社内でなにかワークショップ的なことをやっても皆黙っているし、「早く業務に戻りたいな」という雰囲気で…。

 おそらく原因は、業務プロセスが細分化・オブジェクト化されていることでしょうね。たとえば現場では「こんなタイヤいいな」だけを日夜考えていますから、「こんな車いいな」という俯瞰した発想にはなかなか至らないんです。商品開発のほんの一握りの人間だけが、未来の車について考えている状態です。そして、たとえ車全体を捉えられるようになったとしても、もう「車ありき」の世界が前提で「免許がない人が楽しめる車」なんて、当然ながら考えもしませんから。

寺田(i.lab Business Designer):
 なるほど社内の発想で考えると、強く意識しないかぎり「未来の車」にフォーカスして考えることは難しいわけですね。

三好:
 ええ、さらに「全世界に何台デリバリーしてなんぼ」みたいな価値観も強くて、「未来の車」について考えている部署は、社内的にも相対的に扱いが低いんですよね(笑)。本来なら、今日の糧と未来の糧をそれぞれ担う人を社内でバランスをとりながらポートフォリオを考えるのが理想的ですが、なかなか上手くいかず、トラブル対応に汗をかいて走り回っている「今日の糧」を担う人から見れば、「何を夢みたいなことを」という気持ちになるのも仕方がないのかもしれません。

 一方、i.schoolもEDGEプログラムも、みんな「俺にしゃべらせろ」っていう人ばかりじゃないですか。私も社外でコミュニケーションをとれるようになったのは、10年くらい経験を積んでからですね。自動車は技術領域がとにかく広くて、商品として語るまでに時間が必要だったんです。

三好 健宏三好 健宏 氏(ルノー・日産 アライアンス コネクティドカー&モビリティサービス事業部 主担)
東京大学生産技術研究所 修士課程修了(マテリアル工学科専攻)。本田技術研究所に入社後、車体の軽量化やF1電動パワートレインの高出力化など限界突破型シーズ研究の追求と、ダーウィンの海による淘汰を幾多経験しイノベーションプロセスに興味を持つ。その後デザイン室へ異動、"人間中心イノベーション"に取り組み、完全自動運転のコンセプトカーを東京モーターショーにて提案。現在はRENAULT-NISSAN ALLIANCEにて"自動運転のその先を創造する"をミッションとし、新たなモビリティサービスの社会実装を目指し活動中。

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