コワーキングスペースの日常は「越境の日常」だが、その「越境活動」の条件とは何か?
宇田川(埼玉大学 人文社会科学研究科 准教授):
組織の垣根を超えたり、横のつながりを作ったりを自然にやっているというのは、僕も中村さんと同じです。自分のテリトリーみたいなものはそれほど意識していなくて、外の人がどんどん入って来てくれたり、こっちが出向いて行ったりする、その方がいいじゃないか、という感覚です。
なぜ良いかというと、「越境活動」なんですよ。例えば全く知らない人と出会って話をするとき、相手にとって意味のあるように自分を語り直さなきゃいけない。そのときに意外な自分の側面に気づいたりして、ある種の学習が生まれるんです。越境なんて、直線の世界からすると絶対あってはいけないものでしょうけれど、そういう偶然みたいなものの中で、自分たちが新たなものになっていく。それとコワーキングって、すごくつながっているように思います。
中村(株式会社ツクルバ 代表取締役CCO):
そうですね。コワーキングスペースの日常は、越境の日常だと思います。コワーキングをやる前から、僕はアウェイ戦が好きなんですよ。学生時代も、自分が学んでいる建築の世界ではない、他のデザインを学んでいる同世代は何を考えているんだろう? と枠を広げてみると、めちゃくちゃ面白かった。それが原点で、デザインという括りも超えてビジネスの領域で話されていることにも首を突っ込んでみたり、越境を繰り返してきました。アウェイに行くと、自分の専門性が逆照射されて浮かび上がる。自分の領域を誇りに思うこともあるし、話したことが伝わらないときは、「自分は閉じているな」と反省することもあります。異なる領域の人と共通言語を探しながら話すのは、一番おもしろいことですよね。
武井(ダイヤモンドメディア株式会社 代表取締役 共同創業者):
越境って大事ですよね。これまでは、「お前はそれだけやってればいいよ。他のことは分からなくていいよ」と、細かく分業してきたわけです。でも、新しいものは抽象度を上げたところからしか生まれない。抽象度が高いものは分け隔てられているものの上にあるので、分け隔てられている色々なものを知っていないと、そこには上がれません。だから色んな人生経験というのはやっぱり生きてくるし、会社側がそれを提供できるような場や機会を作ることが、これからの組織や社会のデザインに必要になってくるんじゃないかと思います。