“豊かな生け簀”とは何か。自動車会社の場合
自動車会社の場合で例示してみよう。自動車会社は製造を請け負う「メーカー領域」と対面型営業の販社である「ディーラー領域」とが別会社になっていることが多い。かつてディーラーは、まずは広告を掲載することで顧客を確保していた。広告掲載後、持っている顧客の対面データ、つまり営業マンのアプローチ履歴、顧客の所有している車の車検情報といったデータを駆使してマーケティングを最適化するフェーズに進む。これがフェーズ1だ。しかし、この時点では顧客のニーズ、ジョブ理論でいう「状況」を掴むことはなかなか難しい。
ディーラーが持っているデータに加え、メーカーが持っている自社のデジタルチャネルに集まる情報(自社サイトのログデータやサイト内MYサービスの利用履歴など)を収集し、そのデータをディーラーの営業マンに引き渡すことで、顧客が何に興味を持っているのかを認識しながら適切なサービスを提供していくことが可能となる。これがフェーズ2である。
しかし、これ自体もそれほど成果が上がるものではない。顧客の状況を自社だけで掴むのはなかなか難しいからだ。そこでフェーズ3として今、非常に注目されているのが、自社以外の商品への興味や、顧客のライフスタイルの変化を外部データから推定して対応するということだ。
たとえば来店予定の顧客が出産間近だということが推定できれば展示車にベビーシートを用意したうえで接客する。そうすれば来店の印象は良くなるだろう。顧客の変化を察知し、状況を把握した上でマーケティングを行うことが可能になっているのだ。