デジタルマーケティングプロセス変革の肝は、“豊かな生け簀”を作るという「養殖型アプローチ」
今年3月1日。この日は全国的に春の嵐で、数日前から交通に影響が出るほどの暴風雨が予測されていた。 通勤時間帯に暴風雨のピークをむかえる地域も多く、企業によっては前日から出勤を遅らせる対応を指示していた。そんななか2月28日の晩に魚住氏は友人の山本氏と飲んでいたが、その山本氏があるメールを受け取る。
差出人はソニー損保カスタマーセンター。内容は、「明日は大荒れの天気です。気を付けてください」という趣旨の注意喚起に加え、「山本様は車両保険にご契約いただいています。もし契約車両が以下のような被害にあった場合は、車両保険でお支払いできる可能性があります……」というものだった。この対応が、デジタルマーケティングとして秀逸だと、魚住氏、宮坂氏は語る。
デジタルトランスフォーメーションの掛け声のもと、マーケティング業務のデジタル化が急速に進む昨今。各社が様々なツールを導入し、マーケティングプロセスを変革させていこうとしている。
これまでのマーケティングはマス向けのものが主流で、対象となる大きな母体に広告を投下し、なるべく効率的にターゲットを誘導できるようにするという考え方をしていた。たとえて言うなら、地引き網漁的な偶発的アプローチである。しかし、デジタルマーケティングの時代には、その考え方を変える必要があると魚住氏は話す。
デジタルマーケティング時代に必要なのは「生け簀(いけす)を作る」という発想だ。顧客と常に繋がり続けられるようにし、顧客と一対一のコミュニケーションをするなかで、顧客それぞれのタイミングを掴んでアプローチし、契約に結びつけるということが必要だ。いわば、養殖型アプローチである。そして、顧客との一対一のコミュニケーションを豊かにすることで生け簀を豊かにする必要があるのだ。