“痛みを伴う転換点”で得た「頑張ればできるからの脱却」と「得意なところだけを見つけていく視点」とは?
仲山進也氏(以下、敬称略):トラリーマンの共通点として、「レールから外れるような、痛みを伴う転換点」があるのではないかと考えているのですが、都竹さんはあてはまりますか?
都竹淳也氏(以下、敬称略):先ほど少し触れましたが、次男の障がいが分かったことですね。僕自身は子どもの頃、運動がどうやっても苦手で、運動能力測定のソフトボール投げで女子よりも飛ばせなくて悔しい思いをしていたんです。屈辱的で、運動以外で頑張ろうとやってきたつもりだったんですが、いつしかそれを忘れてしまっていたんですよね。
特に県庁に入って、知事秘書時代あたりは、ある一定の水準の仕事ができていない人を見ると怠けているように思えるわけです。「努力していないだけだろ」と。昔、どんなに努力してもボールを飛ばせなかった経験があったはずなのに、どこかへ行ってしまっていたんですね。
だから、当時は周りに対して苛立って「もっと努力しろよ!」と怒ってばかりでした。「あの頃の都竹さんは怖かった」といまだに言われます。
仲山:都竹さんにもそんな時代があったとは。
都竹:はい、かなり怒鳴り散らしていました。ところが、ちょうど楽天と提携の仕事を始める直前くらいのことですが、2歳になった次男が全然言葉が出てこないことに夫婦で気づいて。
専門医に診てもらったら、知的障がいを伴う自閉症という診断でした。2歳の頃はあまり差を感じませんでしたが、3歳、4歳と成長するにつれ、周りの子どもたちとの差が決定的になっていく様子を毎日見せつけられるわけですよ。
すると親としては何を考えるかというと、たった一つで「この子のいいところは何か」と、それだけなんです。じっと観察して、ちょっとした変化を見つけては大喜びして、朝から晩までずっと「この子のいいところを見つけてやろう」と考え続ける。
そうすると自然と職場でも、人のいいところが見えるようになってきたんです。人には誰だって苦手なところがあるんだから、得意なところを見つけて、それを伸ばすことを考えようと。これは次男に教わったことですし、これからもずっと一緒に学んでいくと思っています。
仲山:「頑張ればできる」からの脱却、という経験だったんですね。
都竹:「頑張らない奴がおかしい」という考えから脱することができて、本当に怒らなくなりました。