UberやAmazon、Airbnbが実践する「データサイエンティスト」と協業するユーザーリサーチ

第4回

[公開日]

[著] 古川 亮太朗

[タグ] デザイン思考 UX ユーザーリサーチ CX データサイエンティスト エスノグラフィ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

提供価値のトレードオフ関係を発見し、サービスをより強固にしたuber

 定性調査は対象者が抱える価値や課題を複数導き出すことができますが、優先順位付けや価値同士の関係性を把握することまではできません。そこで、定性調査で発見した複数の価値や課題を、定量調査により優先順位と関係性を明らかにしたのがuberの事例です。

■事例1:uber

 uberは彼らが提供しているサービスの1つ、uberPOOLのUX改善のために定性調査と定量調査の統合リサーチを行いました。

 uberPOOLは2014年にローンチされた相乗りサービスです(※1)。1人または1グループで乗車するuberX等とは異なり、複数人で1台の車をシェアします。乗客は費用を抑えることができ、ドライバーはサービス効率を上げることができるというメリットがあります。

※1:日本では未ローンチ (2019年1月現在)

タイトル写真出典:uberのサイトより

 しかし、リリース後に相乗りをする乗客のピックアップに生じる追加時間やコスト、非効率的なルート提案が存在し、乗客と運転手へ理想的な体験が提供できていないという課題が浮上しました。そこで、uberPOOLの方向性と潜在的に求められている機能を探索・実装するために、定性調査と2種類の定量調査を統合したリサーチ手法を生み出し、サービス改善を図りました。

 ポイントは定性調査と2つの定量調査を組み合わせ、各ステップの調査結果が次の調査で活用されるように設計された統合的な調査設計であることです。定性調査で発見した複数価値の重要性と関係性を定量調査で明らかにした結果、重要な価値とトレードオフの関係となっていることを発見することができました。定性調査だけでは複数の新しい価値の発見で留まり、定量調査だけでは新たな価値の発見は出来ず特定の状況の動きや思考の傾向しか明らかに出来ません。各調査が持つ強みを活かした事例です。

タイトル

 定性調査で発見した複数の要因の中から、重要なものとその関係性を発見するために2つの定量調査を実施しUX改善に繋げていきました。


Step1

まずはインタビューとエスノグラフィによる定性調査からスタート。この調査により、ユーザーが移動手段を判断する際には機能性や費用、その時の状況など、複雑な要因の組合せからトレードオフを行うことが明らかになりました。

Step2

MaxDiff法という手法を用いた定量調査を実施。MaxDiff法は複数の選択肢の中から最も良い選択肢、最も悪い選択肢の2つを選択させ、トレードオフに基づいて選択肢の重要度を数値化します。この調査により、定性調査で明らかになった多数のトレードオフ要因から、鍵となる重要な要因を導き出しました。

Step3

コンジョイント分析と呼ばれる手法を用いた定量調査を実施。コンジョイント分析は商品やサービスが持つ複数の要素のうち、ユーザーにとって好ましい組み合わせを発見するための分析手法です。その結果、ユーザーが移動をする際に「価格」や「待ち時間」、「ピックアップしてもらう場所までの徒歩距離」といった幾つかのメリット・デメリットの組合わせをトレードオフしていることを明らかになりました。

Step4

この発見をUX構築へ反映し、uberPOOLを改善した結果、キャンセル率の低下やアメリカ国内外市場へのサービス展開といった成果が生まれました。 


 目的を達成するための人間の判断プロセスは非常に複雑な過程を経ています。キャッシュレスやモビリティのような「手段」を提供するサービス領域では、価値のトレードオフ関係を明らかにすることが重要です。ユーザーが目的を達成するために、選択肢から何を犠牲にしても良いのかというトレードオフ関係を明らかにすることで、サービスの機能や価値の取捨選択を可能にします。そのことで、ユーザーの潜在的な価値によりフォーカスしたシンプルで強いサービスを作り出せるのでしょう。

【このページのサマリー】

  • 定性調査によって発見した複数の価値の優劣や関係性を定量調査によって明らかにする
  • ユーザーが重要視する価値、犠牲にしても良い価値のトレードオフの関係性を把握することで、サービスの機能や価値の取捨選択を行い、より強固なサービスを生み出す

バックナンバー