UberやAmazon、Airbnbが実践する「データサイエンティスト」と協業するユーザーリサーチ

第4回

[公開日]

[著] 古川 亮太朗

[タグ] デザイン思考 UX ユーザーリサーチ CX データサイエンティスト エスノグラフィ

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UXの観点からデータの正確性が失われてしまう原因を発見したAirbnb

 収集したデータは正確性があるデータでしょうか。インタビューに回答する状況やユーザーとステイクホルダーとの利害関係など、様々な要因によってデータの正確性が欠けてしまう可能性があります。最後に、収集データに正確性が失われていたデータへUXの観点から向き合ったAirbnbの事例を紹介します。

■事例3:Airbnb

 見知らぬ人同士をつなぎ、民泊を提供するAirbnbにとって不適切な行動をするゲストはサービス体験を阻害する悩ましい存在です。そこで自動的に不適切なゲストを特定し、警告するためにホストからのレビューを活用しようとしました。

 ポイントはデータをそのまま分析するのではなく、データに正確性が欠けていることを認識した上で、UXの観点からデータ取得フローにある原因を発見し、レビューのデータ分析を行ったことです。

 彼らはレビューの星評価と内容を分析することで不適切なゲストの特定ができると考え、レビューデータを分析しましたが、この分析から2つの課題を発見しました。

 1つ目の課題は「レビューの情報がホストの主観的な内容であること」です。低評価のレビューを受けたゲストが、全てのホストに対して不適切であるとは限りません。偶然の事故で低評価のレビューを受けた、不運なゲストである可能性もあります。一概にレビューをしたホストにとって不適切であるのか、サービス全体が不適切であるのかという判断ができません。そのため、低評価のレビューから不適切なゲストの発見を自動化すると、公平性を欠く可能性があります。

 2つ目の課題は「レビューには5つ星評価が多く、内容が正確であるとは言い切れなかったこと」です。何故、高評価のレビューが蓄積されたのでしょうか。その原因はレビューシステムにありました。Airbnbのレビューはホストとゲストが互いに評価し合う仕組みとなっています。低評価を下すことで、ホストはゲストから報復があるのではないか、今後ゲストがAirbnbを使う際に影響が出るのではないか、といった懸念が生じ、意図的に正確でないレビューを書いていたのです。

 そこで、彼らが着目したのがプライベートレビューです。Airbnbには2種類のレビューが存在します。1つは全ユーザーに対して公開されるパブリックレビュー、もう1つはAirbnbに対してのみに共有されるプライベートレビューです。プライベートレビューでは正しいレビューを行っているのではないかと仮説を立て、データ分析を行いました。パブリックレビューとプライベートレビューの内容を対比させて分析した結果、肯定的なパブリックレビューとは乖離した否定的な内容をプライベートレビューから発見。新たなレビューフローを構築しました。

 この事例は、サービス改善にあたり利用データとどのように向き合うべきか参考となる事例です。これまでの分析に加えてデータ取得の過程にも着目することで、データに存在するバイアスや着目すべきデータセットに変化が起こり、より強固な分析が期待出来ます。

 また、ユーザーが使いやすいUXを提供するだけでなく、UX/サービス改善や新たなサービス開発につなげていくために適切なデータを取得するという観点からのUX設計も重要となります。

【このページのサマリー】

  • 取得する過程データの正確性が欠けている可能性があることを認識する
  • データの正確性が欠ける原因をUXの観点から発見する
  • 正確性のあるデータ取得という観点からUXを設計する

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