お客さまが実店舗とECの「便利なほう」を選択できる、店舗スタッフの貢献の可視化とは
──前回までのお話を伺って、実店舗で買い物を楽しむお客さまとECで効率よく買い物したいお客さまをつなぐという発想のなかに、「店舗スタッフ」の存在を大切にしているという印象を受けました。
株式会社 fitom執行役員UX本部長 村上悠氏(以下、敬称略):前回、少し説明しましたが、店舗スタッフが試着するお客さまをお手伝いしその情報がタグ付けされ、その試着情報を参考にしてECで購入されると、そのスタッフの成績として反映される仕組みになっています。店舗で試着だけして帰ってしまうお客さまはどうしてもいらっしゃるのですが、店舗スタッフとしては、やはり手間暇が掛かったのに「自身の売上」につながらなかったという気持ちが残ります。
fitomを活用して試着情報をアップするお客さまは、一見すると「試着のみしているお客さま」に見える。でも実はECでの売上に大きく貢献している可能性がある。店舗スタッフにも、試着ユーザーのECでの購買貢献度を可視化することが重要になります。
店舗スタッフという存在は、世界中で一番試着できる人なんです。平日の空いている時間に、自分で試着してアップすることもできる。こういった活動も全て、スタッフをタグ付けすることで可視化していける。店舗スタッフにもやりがいが出ます。眼の前のお客さまだけではなくて、その向こうにいる何十、何百というお客さまに接客しているのと同じことだという話なんです。これは、今までにない接客体験だということです。どんな仕組みでも、働く人にとって良い仕組みでないと定着しないという気持ちもあります。
──実店舗とECは競合してしまうこともありますが、そうならないということでしょうか。
株式会社 fitom 代表取締役社長 執行役員 安藤望氏(以下、敬称略):fitomは、あくまでも試着情報の共有なので、fitom上で直接の販売は行いません。だから、fitomそのものがアパレルECの売上と対立することはない。アプリ経由のアパレル自社ECへの送客や、スタッフのタグ付けなども含めると、アフィリエイトに近いかもしれません。
そして、そもそも実店舗とECが対立している構図がおかしい。それぞれに長所短所がありますし、お客さまによってどちらで買いたいかは違う。多様なお客さまに満足いただくには、両方を活かす必要がある。そのために、実店舗のいいところ、つまり試着できるということをECに共有し、つなげていくのがfitomです。