企業が変わり続けるために、“1on1のヤフー”から脱却する
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 荒金泰史氏(以下、敬称略):ヤフーでは2012年から経営改革が始まり、そこから抜本的な組織開発が進んでいきました。2013年より専門チームが各部門の課題解決に乗り出し、2015年から解決のための施策が全社展開されていった、と伺っています。
ヤフー株式会社 小向洋誌氏(以下、敬称略):2013年からの5年間は、「才能と情熱を解き放つ」というコンセプトの下、働き方の自由度を高め、それらを解き放てる土壌をひたすら耕してきました。他社の方から注目していただけている1on1なども、そのための施策のひとつでした。
ただ、組織としては、いつまでも“耕しているばかり”ではいられません。会社としては現在、育成から収穫にフェーズを移行していて、これまで以上に強く「ヤフーのビジョンはこうで、社会に生み出したい価値はこうだから、君たちはその枠の中で何をするのか?」と、「経営戦略・経営計画目標」から「組織・個人目標」へカスケードダウンを行なっているところです。
荒金:1on1を丁寧に実施していた時期と比べると、だいぶ状況が変わってきていると?
小向:そうですね、社員も少し驚いているようです(笑)。つまるところ、HRでやらなければいけないのは「現在の会社の課題を解決する人事制度や施策」です。会社のフェーズが変われば、優先して解決すべき課題も変わります。だから、一生変わらない人事施策って、あり得ないと考えています。むしろ、変わり続ける会社において、人事も変わり続けないとダメなんだと捉えています。
僕らは「組織開発や人材開発が思うように進まない企業文化」に課題を感じたから、そこを根本から耕し直すことに注力してきました。それがある程度できてきたいま、「人材開発に偏りすぎて、意地でも結果を出していくハングリーさが少し足りない風土になっているな」と感じたので、今度はバランスを取るためにも振り子を逆に振っているイメージなんですよね。
埼玉大学大学院 人文社会科学研究科 宇田川元一氏(以下、敬称略):「変わり続けなければならない」という意識にはとても共感します。私たちは「変わらない、変えてはいけない何か」を守るためにも、それ以外のことは環境や状況に応じて、すべて変えていく覚悟を持つ必要があります。では、その「変えてはいけない何か」といものが、個人にとっての信念や信条であり、組織にとってのビジョンやミッションなんですよね。