プライシングモデルの組み立てと離脱を抑える顧客接点づくり
それでは「2.収益を上げるプライシングモデル」についてはどうだろう。プロダクト販売型と異なり、原価回収ポイントを超えた分はすべて利益になるという構造だ。LTVベースで収益最大化を図るため、重要KPIは顧客獲得率よりもむしろ離脱率を意識するという。単純に顧客獲得があっても離脱が多ければ支出がかさむため、離脱させない施策が求められる。また、残価設定ローン(残クレ)などでの購入の是非も議論になるが、耐久消費財についてはタッチポイントが失われることにもなるため、商品に応じて設計を考えることが不可欠だ。
安田氏は「製品販売モデルでは、『物理的な製品』について価格をつけるが、サブスクリプションサービスでは、サービスを使うことに対して得られる『体験価値』に対して価格をつけるつもりで望む方が良い。単なる分割払いやモノのセット販売にならないよう、ソフトサービスなどを含めた付加価値づくりが肝要になる」と語る。
なお電通デジタルではプライシングモデルを保有しているが、まずは顧客視点でサービス設計を検討することが大切だという。売上と費用に分けてパラメータごとに収益構造を可視化し、シミュレーションモデルを作成した後に、事業視点で改めてサービスが現実的か、価格にその価値があるか、などの検証を行なう。その時、単月ではなく3~5年間での計画をたてることが望ましい。そして、モノが絡むサブスクリプションの場合、送料やクリーニング代など、利益率を下げる要因をどう軽減するかも考慮する必要がある。
そして、最後となった「3.離脱を抑え、つながりつづけるカスタマーサクセス」について、安田氏は「一人ひとりの顧客と約束した顧客の最終目的」を考えるという。「こういう生活がしたい」「こういう楽しみを得たい」という顧客の気持ちに寄り添いつづけ、達成を支援することというわけだ。そのためには、「顧客の気持ち=モチベーション」を察知し保ちつづけてもらうためのテクノロジー、データや仕組みが重要になる。
それでは「顧客のモチベーションの変化」をどのように察知するのか。安田氏は「地道にあらゆるユーザーシナリオをしっかり考えることが重要」と語り、「ベータ版を作りながら、どこでどのようなデータを収集するのか、どこで離脱しそうかなどを考えながら、セグメントやユースケースに応じてカスタマージャーニーを考える。そして、データ取得や基盤の設計までできるだけ細かくシナリオを考えること」だと説明した。