カスタマージャーニーマップに落とし込んで実践するCX管理
では、実際にCXを測定するにはどのようにしたらいいのだろうか。
よくある手法では、たとえば店舗に所属している店員の接客態度や、それをもっと細分化して店員の丁寧さ、親身さ、身だしなみ、あるいは専門知識に関して「5段階で4」などと評価していく。この場合、何が悪かったか、去年に比べて何が改善したかはわかる。しかし、そういったピンポイントかつ売り手視点での評価の場合、総合的に何が顧客の体験・感情に影響を与えているのかはわからない。
顧客視点に立脚したCXMの場合には、カスタマージャーニーに沿って、各タッチポイントで何が顧客の体験・感情に影響を与えているのかを明らかにする。そして、それぞれのタッチポイントを構成する因子、たとえば来店時の場合は、店舗の立地や営業時間、あるいは店舗内の快適性や店員の歓迎感などが因子としてあるが、それを明らかにし、そのなかで何が悪いのかを総合的に把握していく。
大日本印刷では、CXMをスコア化して可視化するサービスを用意している。それが株式会社Emotion Techとの共同開発による「エモーショナル カスタマージャーニーマップ(エモーショナルCJM)」である。前述したCXをカスタマージャーニーマップでスコアリングしたものと、NPS®(Net Promoter Score)を掛け合わせて可視化するものである。
NPSとは、2003年にアメリカの戦略コンサルティングファーム、ベイン・アンド・カンパニーが考案した顧客ロイヤルティを測る指標である。「あなたはこのサービスをどれぐらい、友人や知人に勧めたいと思いますか?」という質問に対して顧客に10点満点で評価してもらい、9点、10点をつけた「推奨者」の割合から、0〜6点をつけた「批判者」の割合を引いた数値で算出する。
NPSが高い企業ほど、同業他社に比べて成長率が高いといわれており、競合との相対評価もできる指標である。またNPSは受注率や稼働率などの短期業績KPIとも非常に強い関係があり、満足度やリピート意向よりも強い相関が証明されている。さらに、NPSを上げていくと経営指標が上がっていくことがあらゆる業界で証明されている。
エモーショナルCJMではCXをNPSと重ね合わせることで、顧客とのタッチポイントを構成する各因子の推奨度に及ぼす影響の大きさと、その因子が顧客に与える感情的影響を可視化している。図中青線の「Impact Power LINE」は、既存顧客へのアンケートを「感情解析」し、各タッチポイントにおいて顧客ロイヤルティに与えるインパクトの強度を示す。赤線の「Current state」は、タッチポイントにおける既存顧客の影響の強弱を示す。青線と赤線の差が大きいほど、推奨度を高める上で改善効果が高い体験となる。
注:NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。