複数の人の視点を借りることで、自分のナラティヴに気づく
対話を重視するには、知識やスキルで対処できる「技術的問題」ではなく、自身を変化させる必要がある「適応課題」を意識することが重要だという。たとえば、「話を聞かない上司」がいたとして、「権威主義だから」「忙しいから」と決めつけてはいないだろうか。相手から自分がどう見えているのか、どんなアプローチなら聞いてもらえるのか、考えるだけでも反応は変わってくるだろう。同様に「アイディアが出てこない」という部下に非情なダメ出しをしていないだろうか。まずは自分の「ナラティヴ(解釈の枠組み)」を一旦脇に置き、相手の背景にある文脈を考えつつ、時と場合に応じて対応を変化させていくことが、対話における溝を解消するのだという。
しかし、なかなか自分のナラティヴは自分に見えないもの。また問題の捉え方も一面的になりがちだ。そこで、宇田川氏は複数の人の視点を借りることで、論点を多方面から捉える方法を研究しているという。そうすることで表面に見えている問題を別の視点から捉え、新たなアプローチを考えることができるというわけだ。逆説的には、問題だと捉えているのは自分のせいであり、自分も問題の一部である可能性もある。そうした自分のナラティヴがどのような時に影響するのか、大きくなるのかがわかり、相手のナラティヴについても想像ができるようになるだろう。