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第二創業~両利きの経営の先へ

「物語マトリクス」と「ケイパビリティ」で理解する、日本企業独自の両利きの経営と第二創業とは?

Vol.2-2:慶應義塾大学院 特任教授 梅本龍夫氏、アクション・デザイン代表 加藤雅則氏

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 「両利きの経営」理論をベースに日本企業の第二創業について検討していく本連載。前回は、日本企業の中計策定プロセスに切り込んだ。続く後編では、梅本龍夫教授の「物語マトリクス」という考え方を用いながら、第二創業と「両利きの経営」において「WHYを問うこと」がいかに重要であるか、そして欧米企業の物真似ではない日本企業ならではの組織進化の可能性が語られた。

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混沌の世界に押し出された今、WHYを問わざるを得なくなっている

──梅本先生は「両利きの経営」を「物語」で説明されていますね。具体的にお聞きできますか。

梅本 龍夫氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授/iGRAM代表取締役 物語ナビゲーター、以下敬称略):私が立教大学で2015年から理論化と実践を積み重ねてきた「物語マトリクス理論」について概略を説明しましょう。

 次の図が、物語マトリクス理論の基本構造を表したものです。上下の軸が「日常/非日常」、左右の軸が「欠落/充足」という状態を表していて、真ん中には「源」があります。左下の「日常・欠落」の象限が起承転結の「起」に当たるところで、ここから物語が始まります。

物語マトリクス物語マトリクス理論 基本構造図(物語の源と8つのエピソードの螺旋)

 物語のスタートは「欠落した日常」(図の左下:Episode 1)なんです。真ん中にある「源」、つまり一番大事な企業としての「存在目的」を感じられない場所にいたのが、失われた30年の日本企業だと見ることもできます。ここは根本から考え直すことをしない「自明の世界」です。

 ところがコロナ禍の今、全世界で日常が崩壊し混沌の状況に放り出されました(図の左側:Episode 1→2→3)。非日常で欠落しているという、もっとひどい状況になったわけです。

 こういう状況になるとWHY(存在目的)を問わないとやっていけなくなります。日常では「問いがない」という状態でしたが、急に非日常に押し出されたことで「私、なんで生きていたんだっけ?」という問いが生まれ、「源」にアクセスすることになるんです(図の左上:Episode3→4)。

 そこでWHYに気づく「顕在化」が起きて、図の左上から右上の「創発の世界」に入ります(図の左上:Episode4→5)。ここでは、言語化できなかったものが言語化できたり、形になったりして、新しいものがどんどん生まれます。第二創業やイノベーションがここ(図の右上)で起こるわけです。

 ここで物語はプラスに転じるのですが、あくまで非日常なんです。この世界でずっとやっていけるわけではないので、ここで生まれたものをちゃんと「構造化」する必要があります(図の右上:Episode5→6)。「構造化」ができると、今度は「秩序の世界」というプラスの日常に転じることができます(図の右下:Episode6→7)。新しい事業をきちんと構造化し、オペレーショナル・エクセレンスにもっていく段階です(図の右下)。

 ところが、ここで最初の記事でも説明した「サクセス・トラップ(成功の罠)」が起きるんですね。オペレーションをパターン化して規模の拡大をするうちに、せっかく「顕在化」していた「源」が「潜在化」して見えなくなってしまうんです。そしてまた欠落した日常に戻ってしまう(図の下側:Episode 7→0→1)。これが、日本企業が80年代に欧米を抜き成功し、さらバブル崩壊後、「源」が見えなくなり、どうしていいのかわからなくなった状況です。

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