「潜在層」への継続的アプローチが採用力を向上させる
楊氏は次に、「スタートアップが採用活動で成功する方法」について話した。
リンクトインを活用する際、スタートアップからよく相談される課題は、次の3つが多い。
- 知名度がない
- 給与・福利厚生では負ける
- 採用予算がない
この問題を解消するためにはどうすればよいのか。楊氏は、ポイントとして「採用力の向上」を挙げた。
「採用力」は、リンクトイン上で「働く場」としてのイメージを醸成し、しっかりターゲット人材に刺さるメリットを提示していくことで高められると言う。
「そのためにはまず、ターゲットとなる人材像を明確にしておくことです。経営者と現場、人事で求めている人材像がズレている場合があるため、事前のすり合わせが重要です。リンクトインではターゲット人材がいる企業の求人情報や離職率、離職者がどの企業に転職したかなどのデータが閲覧できます。これらのデータを活用することで、『オファーが届きやすい人材』にターゲットを絞ることもできます」
また、ターゲット人材に向けた情報発信もポイントとなる。たとえば、ターゲットの人材が30代で「仕事も家庭も両立したい」というニーズがある場合、「提携しているジムや保育園がある」といったメリットを打ち出すなど、人材が求めているものと企業が提供できるもののギャップを埋めていく発信が鍵となる。ターゲット人材にとっての自社のメリットとは何かを探すことが、最初の段階では重要なのだ。
リンクトインのユーザーのうち、転職を考えている「顕在層」は20%で、転職は考えていない「潜在層」が80%。「潜在層」のうちの12%が個人的なコネクションを使って企業情報をヒアリングしている点と、52%が「採用担当者との会話には前向き」と答えている点に触れ、「顕在層はもちろんのこと、潜在層にアプローチし続けることで、潜在層が転職活動を始めたときに候補に入ることが、企業としては大切になります」と解説した。
さらにスタートアップの場合、全社員を巻き込んだ採用活動も効果があると話す。職場紹介は「社長よりも社員がした方が3倍信頼される」「個人的に社員とつながっていれば、スカウトメールの返信率が46%向上する」などのデータがあることから、社員からの情報発信も大切なポイントになると述べた。同様にターゲット人材に絞った広告配信も効果的で、「広告を見た回数が多いほどスカウトメールの返信率が上がっていく」のだと言う。
「社員自身の情報発信、広告を利用した情報発信の両方を活用することで、ターゲット人材への認知度を上げながら『採用しやすい環境』を作っていくのです。情報発信の後には効果測定をしっかり行うことで、次の情報発信に生かすことができます」
最後に、楊氏は「リンクトインは、ビジネスパーソン向きのSNSであり、利用そのものは無料です。個人アカウント、企業アカウントでの発信はすぐに始めることが出来ます。転職市場にいない希少な人材の採用も効率的に行う事ができます」と語り、講演を締めくくった。