インタビュー 「戦略的経理思考」とは

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コロナ禍で会社を潰さないための「戦略的経理思考」──経理による“失敗しない新事業計画”の真意とは?

ゲスト:流創株式会社 代表取締役 前田康二郎氏

 デジタル化の波がバックオフィスにも及ぶ昨今、経理業務は自動化されて人は不要になるという“経理不要論”も唱えられている。それに対して異を唱えるのが、経理の専門家として独立して以来、経営難の会社の再建や経営者・従業員に対する「経理的マインドセット」の指導などで数々の会社を自走できる組織へと導いてきた前田康二郎氏だ。この6月に出版した『つぶれない会社のリアルな経営経理戦略』(クロスメディア・パブリッシング)他、多数の著書で持論を展開する前田氏に、これからの経理が向かうべき方向について伺った。

[公開日]

[語り手] 前田 康二郎 [取材・構成] やつづかえり [写] 長谷川 梓 [画] 青松 基 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 企業戦略 DX 経理 バックオフィス 戦略的経理思考

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“経理不要論”は本当なのか

──識者やメディアが唱える「経理不要論」について、前田さんの見解を教えていただけますか。

前田康二郎氏(流創株式会社 代表取締役、以下敬称略):何年か前からAIによっていろいろな職業がなくなっていくと言われていて、なくなる確率の高い職業の筆頭に一般事務と経理が挙げられることも多いですね。ただ、それには条件があり、例外処理が一切なく、どの取引先とも統一ルールを敷けるかどうか、など数多くの前提条件が必要になると思います。

 たとえば入金処理などは、自社で入金サイトを30日と決めてお願いをしても大手の受注先から「60日にして欲しい」と言われたら中小企業はそれに沿わなければならないことも多いでしょうし、案件によって入金サイトが分割、前払など変わることなども一般的に多々あります。簿記の通り現実は動かないのです。そうなると、いくら良いソフトウエアがあっても、会社ごとに異なる入金サイト、案件ごとに変更になる入金サイトを登録・変更するというような「例外処理」の業務はどうしても人がそのソフトウエアを操作する必要がありますし、経理知識が一切ない人がそれを扱うのはリスク上危険です。

 だから「不要」というよりは、「より少数精鋭を目指す」ということがより現実に近い目標ではないかと思います。経理知識のある人がAIなどを伴ったソフトウエアを活用し、ソフトウエアやAIで自動化できる経理業務があればそれらを活用して業務を効率化し、例外処理など人間でしか行えない業務は人間が引き続き担う、という住み分けの形がベストだと思います。

──“経理不要論”を言葉どおりに捉えて、経理の人員を削減し、問題が起きている会社があるということですね。

前田:はい。私が会社勤めを辞めて起業した頃、「あと3ヶ月で資金がなくなる」という会社をはじめ、経営再建が必要な会社をコンサルの方から紹介され、業務改善をお手伝いました。

 驚いたことに、それらの会社には共通点があったんです。業種に関係なくどの会社にも、優秀な営業がいて優秀なエンジニアもいる。でも、優秀な経理が半年〜1年前に辞めていました。優秀な営業は、売上を出せるかどうかには関係しますが、会社が潰れるかどうかには関係がない。でも、優秀な経理がいないと、会社はタイムラグがあった後に潰れかねない危機に陥るのだな、と怖くなりました。

 ただ、なぜそうなってしまうのかを冷静に観察・分析してみると、客観的な理由がありました。優秀な経理が辞めてしまうと、そもそも「正しい月次決算」が「タイムリーに」作れなくなります。以前は翌月10日までに月次決算が確定していたのが、優秀な経理が辞めてからは1ヶ月経たないと出来上がらない、その出てきたものも社長がチェックしたら売上や費用の計上漏れなどが見つかる。そうなるとますます社長は数字のことを誰にも相談できなくなり、自分だけでなんとかしなければ、となってしまいます。そのような状況ではいくら優秀な経営者の方でも間違った経営判断をしてしまうことが起きます。赤字の会社は全てそういう悪いスパイラルに入っていました。

 そこで私が外注で経理部長の役割を担い、タイムリーに間違いのない月次決算を出せるようにワークフローの改善をし、社長とマンツーマンで数字廻りのダブルチェックを行い、その「正しい」数字をもとに、社長から現場へ的確な指示を再び出せるようにしたところ、1年以内にどの会社も、拍子抜けするくらいに劇的に立ち直りました。改めて「当たり前のことを当たり前にやる」ということの大切さを思い知りました。

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