BuyingタイプとShoppingタイプで異なるカスタマージャーニー
久崎氏はさらに、Xデータをライフスタイルの見極めに活用する例も紹介した。例えばリュックを買いたい人には、2種類の人がいる。山登りをすることになったのでリュックが必要になり、雑誌やウェブで調査をして、店舗で買う場合には来店してすぐに目的のリュックを背負ってみて、気に入れば購入するBuyingタイプ。このタイプの人はカスタマージャーニーが直線的だ。ほしいリュックがどういうものかをわかっており、最短距離でそれを買い求めたい人である。
一方で、Shoppingタイプといわれる人もいる。何かのきっかけでリュックがほしいなと思うが、検討のために雑誌やウェブなどを見ると、一緒に掲載されているモデルの靴やシャツも気になってしまう。店舗で買おうとする場合も、店内でリュックの置かれた場所に行くまでにパンツや帽子にも目が留まり、リュックを背負ってみるときには別のものも試して、結局リュックを買ったり、別の商品を買ったりする。Shoppingタイプはカスタマージャーニーが行ったり来たりしている。このタイプの人は、リュックを買わなくてもその過程での体験が楽しければ満足する。
この二者では、行動過程で笑顔になるポイントが異なる。それを見極めてサービスを提供するには、顧客に「私のニーズをわかってくれている」と感じてもらうことが必要だ。また、「超・個別化」という観点からは、ある商品に関してShoppingタイプの人でも、別の商品ではBuyingタイプの行動をとる。リュックはShoppingタイプとして過程を楽しみながら購入したくても、乾電池はBuyingタイプとして最短距離で買いたいという人がいる。
こういった顧客の感情や心理を考慮しつつカスタマージャーニーを作るにはどうしたらいいのだろうか。久崎氏は5つの質問に答えてもらいながら作っていくことを勧める。1つめの質問は、「誰についてのジャーニーなのか」について。男女や年齢、地域や家族構成といったセグメントだけでなく、ペルソナを作ると良い。2つめの質問は、「その人のゴールが何か」というもの。必要なものを買いたいのか、買い物を楽しみたいのか。3つめの質問は「直前には何をしていたか」、4つめの質問は「直後には何をするか」である。
この3つめ、4つめの質問は3回繰り返すことが必要だという。例えば3つめの質問は「何がきっかけでリュックがほしいんだろう?」「何をしているときにほしいと思ったのだろう?」「何を見ていたのだろう?」と質問を繰り返し、4つめの質問は「購入後、何をするのだろう?」「どういう気持ちや気分になりたいのだろう?」「何を達成したいんだろう?」と質問を繰り返す。そして最後に、5つめの質問として「もっとハッピーになってもらうためには、何ができるんだろう?」という質問を考える。その回答からカスタマージャーニーを作っていくのである。