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冨山和彦氏と入山章栄教授が語る、日本企業の経営者が知るべき「DXの思考法」と「UXの本質」

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 激変する時代に生き抜いていくために、企業は「探索と深化」の両面から進化を続けていく必要がある。5月17日から28日まで株式会社ビービットが開催したオンラインフェス「L&UX2021」では、経営共創基盤(IGPI)グループ会長の冨山和彦氏と、早稲田大学大学院の入山章栄教授が、ビービット 代表取締役 遠藤直紀氏のモデレートのもと、「企業変革におけるUXの本質」について語り合った。歯に衣着せぬ、明確で骨太なメッセージを届ける。

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日本企業の変革が進まないのは経営者の“決定力”不足

 経営の舵取りが難しくなってきたと言われる昨今、冨山和彦氏は2020年に『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』を著し、入山章栄教授もまた2019年に上梓した『世界標準の経営理論』がベストセラーになるなど、それぞれに企業経営に対する提言や示唆を行ってきた。

 セッションの冒頭から、入山氏は「学者の立場から見ても、レガシー系の大手企業が抱える最大の課題は経営者にあると感じる」と語り、また「『会社は頭から腐る』と冨山氏も著書の中で表現されているが、まさにそれを実感している。後継者の不在も大きな課題だ」とも述べ、決定できない経営者が多いことと人材不足を嘆いた。そして、その理由について、経営者の経験不足を挙げた。

「経営者の唯一の仕事は“意思をもって決定すること”です。しかし、日本企業では若手も中堅も決定する経験が乏しく、50代で幹部となっても決めきれていません。意思決定は実践で経験を積むほかなく、座学では学べないものです。起業家であれば1日数回は意思決定の機会があり、5年、10年と経験を蓄積するのが普通です。一方で、大きな組織の中で仕事をしている人には、決定する機会があまりありません。実感として、同じ30代でもスタートアップの経営に携わる人と、大手企業で仕事をしている人とでは大きな差があるように思います」

 そしてもう一つ、入山氏が重視する課題が「経路依存性」だ。企業の組織や機関が事業のために最適化されており、一部を変えようとしても他の部門との関係が深いために変えられない。たとえばダイバーシティを導入しようとした場合、新卒一括採用や終身雇用制など他の制度も変える必要があり、ジョブ型採用や評価制度、働き方の改革なども必要になる。DXだけ実現させようにも、あくまで手段であり、全てを改革する必要がある。そうした難しさがあって、日本企業の多くは抜本的な改革に取り組めずにきたという。

 入山氏は「新型コロナによって危機感を持つ企業が増えてきたのは何より。今後に期待したい」と語る。そのためには、冒頭で語ったような「決められる人材」を、経営のプロフェッショナルとして育成していく必要がある。

 しかし、冨山氏は「次を担うリーダー候補がいないことに気づいているなら、まだマシ」と述べ、「上層部で意思決定が行われ、それが落ちてきていると思われがちだが、実は“上も”決定していない。日本では調和というコンセンサスのもとで決まり、誰が決定を下したかわからないまま意思決定がなされる。たとえ若手が“意思決定に関わる”ことができても所詮調整役にとどまる」と嘆く。

 さらには、今後はそうした若手が変革を求められ、厳しい意思決定を行う必要が生じた時、経路依存性に挑むことになり、猛反発を招くことになるのは間違いない。唯々諾々として調整だけ行い、年功序列で役員になれると思っていた人が、土壇場でルールが変われば、それは話が違うということになる。

 冨山氏は「大騒ぎになるのは必然。決断においては、社内外に軋轢が生まれ、メディアや組合からも批判を受ける可能性があるが、その訓練を受けていない」と手厳しい。

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

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