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Purposeを起点とした新しい経営

“個”の生き様の追求が企業に本質的な成長をもたらす──ワコムCEO井出氏が実践するPurpose経営

第5回  ゲスト:ワコム 井出信孝氏

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 いま企業のあいだでは、社会における“存在意義=Purpose(パーパス)”を再定義して「何のために存在しているのか」、社員一人ひとりは「何のために働くのか」を明確にする動きが活発になっています。これは、技術革新や時代の変化によって消費者ニーズや価値観が変化したことや、企業都合のビジネスではなくサステナブルな経営が求められるようになった社会の変化も影響しています。  経営者のビジョンやPurposeの言語化支援を得意とするIdeal Leaders株式会社CEOの永井恒男氏が、すでにパーパスを導入している企業の方をゲストに迎え、Purposeのメリットを解き明かしていきます。今回のゲストは、ペンタブレットで世界シェアNO.1を誇る株式会社ワコムで代表取締役社長兼CEOを務める井出信孝氏。個人と企業のPurposeの一致がもたらす効果や、社内へのPurposeの浸透方法、Purposeがあることによる社内の変化について聞きました。 ※取材はマスクを着用し、ソーシャルディスタンスを保って行っています。

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企業理念「Life-long Ink」誕生の経緯と社内への浸透

永井恒男氏(Ideal Leaders株式会社 CEO、以下敬称略):ワコムは2018年から「Life-long Ink」を理念として掲げていらっしゃいますね。私たちはPurposeを「組織は何のために存在しているのか」、つまりその組織の「社会的意義(社会に何を働きかけていきたいのか)」を示すものとしていますが、ホームページ等を拝見すると「Life-long Ink」も社会に働きかけていきたいものを示すように感じます。まずはLife-long Inkについて、込められた想いや背景をお聞かせください。

井出信孝氏(株式会社ワコム 代表取締役社長兼CEO、以下敬称略):これは私がCEOに就任した時から掲げている理念です。ワコムはペンタブレットを作る技術がベースの企業ですが、人に向き合い、人に価値を届けたいという想いを強く持っています。

 赤ちゃんは、壁や床にクレヨンなどでわーっと何かを描きつけますよね。そのぐじゃぐじゃの線から始まって、人間は何かしら常に描いて、書いています。それを死ぬ時まで続け、死後も言霊のように残っていく。人は、大量のインクを背負って生まれてきて、生まれてから死ぬまで描き続け、書き続ける。人の一生はそのインクで描かれる物語だとイメージしました。街を見ていて、行き交う人がそれぞれの色で線を描き、その軌跡が色とりどりに交差するイメージが浮かびました。そうした文脈で突き詰めて考えていたら、「人々それぞれの人生に寄り添っていくインク」という意味を込めてLife-long Inkという言葉が自然に“降りて”きたんです。

永井:私もコピーライターとともに企業のPurposeを策定するお手伝いをしますが、コピーライターが考えたのかと思うほど、ワコムの製品と井出さんの世界観が凝縮された言葉ですね。社内の反応はいかがでしたか?

井出:それが、いまだに社内では「何を言おうとしているのかわからない」と言われるんですよ。先日、社員ミーティングをグローバル1200人とインターネットでつないで開催したのですが、Life-long Inkに関するディスカッションでは、策定から3年も経っているのに「ちょっとよくわからない」と堂々と言われました。

 ただ、これには理由があります。私は、Life-long Inkの意味するものを提示していないんですよ。ビジュアル化してイメージを膨らませる取り組みはしていますが。固定的なイメージで提示するのではなく「あなたはどうLife-long Inkを解釈しますか?」と、オープンクエスチョンで問いを置いているのです。それぞれで解釈は違っていい、理念すら成長していくものだと考えています。社員ミーティングでも、私が思ってもいないような解釈をしてくれる社員がいておもしろかったですよ。

永井:素敵ですね。『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』の著者のフレデリック・ラルーは、Purposeを文字にしてはいけないと言っています。Purposeはどんどん降ってくるものなのに、文字にしてしまうと固定化されてしまい、新しいPurposeが降りてきていることに気づけないと言うのです。それに似ていますね。ワコムのLife-long Inkはビジョン・理念という位置付けですが、私たちにとっての「Purpose」と同じだと感じます。

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この記事の著者

フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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