「製品×プロセス」で自社の排出量を把握する
──ここからはカーボンニュートラルが企業に要請するという「守り」と「攻め」の経営変革について、より具体的に伺いたいです。まずは「守り」から。
丹羽 恵久氏(ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター&パートナー、以下敬称略):「守り」と言っているのは、各企業に割り当てられた排出の要件を充たすことです。そのためにはまず、自社の排出を正しく理解することから始めなければなりません。その上で排出量を下げるというアクションが一義的にはあり、しかしそれでも下げきれない部分はどうしてもあるので、そこは回収・吸収、あるいは相殺するという形で対応する。この順番が王道と言えるのではないかと思います。
しかし、ファーストステップである「排出量を正しく理解する」ところから、早くもチャレンジがあります。以前であれば「この業種でこの事業規模なら、おそらくはこれくらい排出しているだろう」という概算でも問題がありませんでした。しかし、EUによる厳格化の動きや、製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)、またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法である「ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)」の考え方が重視されるようになりました。これらにより「製品×プロセス」で厳密に算出する必要性が出てきています。
ただし、現実には「製品×プロセス」でいきなりすべてを厳密に算出できる企業などほとんどないと言っていいでしょう。もちろん最終的には厳密に算出しないといけないのですが、できることから始めて、徐々に精緻にしていくといったやり方が現実解になるだろうと思います。