マーケティングDX成功の鍵となる「データ活用」と「DX for CX」
1つ目の「マーケティングDX」について、南雲氏は「勝率を高めるデータ活用」「DX for CX」という、2つのキーワードを挙げた。丸亀製麺では、「勝率を高めるデータ活用」として、短期・中期・長期のデータ活用を実施。戦略的かつ迅速な意思決定を目的として、すべてのデータを可視化し関連部門にもタイムリーに共有しているという。
「DX for CX」とは、CX(顧客体験)、SX(店舗体験)、EX(従業員体験)をレンズのように重ねながら、それぞれをDXによって高めることで、真ん中においた「食の感動体験」という価値を極めていこうという考え方だ。
丸亀製麺のマーケティングが狙うのは、「ブランドを強くし、選ばれる確率を上げ、消費者に選ばれ続けるブランドになること」である。そのためのロジックでは、「認知率」「パーセプション」と「好意度」の掛け合わせで「来店意向・再来店意向」が増え、「客数」が増えるとしており、認知率・パーセプションと好意度を上げるために、大きな鍵になるのが「情報の総量」だ。テレビCM、PR、デジタル・SNS、UGCにおける量と質、さらにブランド視点・パーパス視点からの量と質について、強く意識しながら情報戦に取り組んでいる。そして、「認知率」「パーセプション」と「好意度」について、様々な数値をKPIとして常にトラッキングしているという。
なお、丸亀製麺のブランディングは、3層構造で考えられている。1層目は、飲食に関わる事業者全般の必須条件として「相対的な安心認知」であり、特に近年では「コロナ禍」対策も必須条件だ。そして2層目はブランディングの基礎となる、「POD(差別化ポイント)を起点」とした構造的優位を築くことだ。そのために丸亀製麺では「ここのうどんは、生きている」をブランドタグラインとし、明らかな差別性の獲得に取り組んできた。そして、3層目は「パーパス起点」のブランディングであり、「なんとなく好き」「いいよね」という好感度・共感性を上げることである。
南雲氏は「これまでは、PODを起点とした差別化によってブランド力を獲得できていた。しかし、セオリーが通用しない昨今、それだけでは十分なブランディングが難しくなっている」と説明した。