「次世代リーダー人材」に変革を牽引してもらうためのプログラム設計
──アイスリー式 変革支援プログラムの全体像をお話しいただいた際、Humanの支援で企業の中から次世代リーダー人材を選出し、彼ら彼女らが実際のプロジェクト推進に取り組んでいくとお聞きしました。しかし、既存事業ですでに手一杯の次世代リーダー人材をそこにアサインするのは難しいのではないでしょうか。
山本:おっしゃるとおり、既存の業務を疎かにするわけにはいきませんから、変革にフルコミットしていただくのは難しいでしょう。そこで、我々はいつも「通常業務時間の3~4割をDXや事業変革に割いてほしい」とお願いしています。
──すると、参加していただけるのでしょうか。
山本:企業が最初に取り組むべきは、出島スタイルのまったく新しい新規事業開発ではなく、“既存事業の変革”です。次世代リーダーが中心となって既存事業の課題を考え、まずは既存事業に実装できるようなデジタルソリューションを考え、実現していくのです。その結果、「既存事業の生産性が大幅に上がる」ということを理解していただいて、皆さん参加してくださいます。
ただ、それだけではなく、企業のトップ(経営層)にもコミットメントしていただき、最初に熱いメッセージを参加者に向け伝えてもらうことも重要だと感じています。
芝:ミラノ工科大学の経営工学研究所で、イノベーションとリーダーシップ領域の研究者を務めているロベルト・ベルガンティ教授から、フェラーリ社の事例を聞いたことがあります。
フェラーリでも事業変革プロジェクトに取り組む際、事業への強い当事者意識を持ち、リーダーシップを発揮できる人材を最初に選出したそうです。そして、彼ら彼女らがワークショップで考えたものをプロジェクト化し、イノベーションを実現したと。次世代リーダー候補の皆さんが、既存の業務ですでに忙しいことは重々承知なのですが、やはり真剣に事業の存続と成長を考える場合には、そういった人材に先頭に立ってもらう必要があるのではないでしょうか。
また、山本も申し上げましたが、次世代リーダー人材に積極的に参加してもらうには、やはりトップのコミットメントが必要です。「このプロジェクトが上手く進めば、顧客体験が良くなり、売上が上がり、顧客の定着に寄与する。また、自走が可能となれば今までSIerに支払っていたコストを圧縮できる」といったたくさんの可能性を、熱意をもってお話ししていただくと、次世代リーダー人材の皆さんも積極的になってくださいます。
大切なのは如何にトップが危機感を持ち、スピーディに実行できるかだと思います。
──やはり、自社の事業を理解しているビジネスサイドの人材が、DX推進プロジェクトの先頭に立つのが良いということですね。
芝:グローバルで事業を展開する大企業からの依頼でも、DX推進プロジェクトのマネジメント手法とシステム思考を、しっかり事業部の人材にインストールしてほしいという内容が非常に多いです。それに、昨今の世間でもトレンドワードとなっている「DX人材」というものは、ビジネスとデジタルを理解し、イノベーションに必要な意識や思考、メソッドなどを身につけた人材のことを指します。次世代リーダー候補となる参加者の皆さんにとっても、キャリア形成上、大きなメリットがあるのではないでしょうか。
──プロジェクトの成果はどのくらいの期間で見えてくるものなのでしょうか。
山本:その企業のスピード感や、危機感によるところが大きいとは思いますが、まずは小さなプロジェクトで素早く成果を出すことを重視していますので、3ヵ月から半年で成果を実感いただけるようには考えています。自走フェーズに至るまでに要する時間は、企業の現状にもよりますが、多くの場合およそ1年を見込んでいます。