「小売×フィンテック×共創投資」という三位一体のビジネスモデル
相田氏によれば、丸井グループは創業以来、小売中心に成長してきたが、2006年のエポスカード開始以降、フィンテック主導の成長に変わる。さらに19年ごろからは無形投資、すなわちスタートアップ投資と新規事業投資を促進することで、「小売×フィンテック×共創投資」の三位一体のビジネスモデルへ転換を図ってきた。「DXはその土台と位置付けられる」と相田氏は言う。
背景にあったのは3つの問題意識だ。
1つは世代交代。2024年には日本の生産年齢人口に占めるミレニアル世代以下の割合がミレニアル以上の世代を逆転するとされる。将来世代の常識であるデジタル、サステナビリティ、ウェルビーイングに対応できない企業は支持を失ってしまうと考えられる。
2つ目に、デジタルが導入期から展開期へと移行していること。ソフトウェア、オンラインを中心に発展してきたデジタル技術がフィジカルの領域にまで浸透してきたことで、オンラインとオフラインを融合させた新たなビジネスモデルの確立は必須となった。
そして3つ目に、2000年前後から始まった有形資産から無形資産への長期的なシフトは日本においても今後急速に進展するものと想定されることがある。
そのため、①将来世代との共創を通じて社会課題の解決と収益を両立、②店舗とフィンテックを通じて「オンラインとオフラインを融合するプラットフォーマー」を目指す、③人材、ソフトウェアに加えて新規事業、スタートアップ投資への無形投資を進めることで知識創造型の企業に進化——の3つの考え方に基づいて進化する必要があったと相田氏は言う。
では、その中でも小売はまずどう変わるべきなのか。丸井グループが目指すのは「売らない店」と「イベントフルな店」だ。
小売業界は、モノ中心の百貨店・チェーンストアが苦戦する一方、モノとコトを提供できるSCが成長している現状にある。こうした流れの中で丸井グループもまた、SC型ビジネスモデルへの転換を図ってきた。2014年3月期時点ではまだ百貨店型の商売で、店舗の取扱商品もアパレル・雑貨が約7割を占めていたが、その後店舗の構造改革を進めたことで、現在は非物販テナントが約半分を占めるに至っているという。
年間2億人、買上客数1億人、年間40万人がエポスカードと契約する店舗を「顧客との接点」と捉え、どうすればライフ・タイム・バリュー(LTV)を最大化できるかを追求する——。これが丸井グループの描く経営の全体像。DXの推進もそうした文脈にある。