「リスキリング=学び直し」に違和感
──後藤さんは、どのような経緯でリスキリングを広める活動を始めたのでしょうか?
私は大学卒業後に銀行に就職し、そこで人材育成に携わったことがきっかけで、20代から30代にかけては教育研修の分野でキャリアを積みました。人事系のスタートアップを経てニューヨークで起業し、帰国後はアショカという、社会起業家を支援するNPOの日本進出を支援しました。
その仕事が終わった頃、アメリカではテクノロジーの力で事業を効率的に成長させていくという流れが起きていました。社会起業家としての生き方を模索していた私は、テクノロジーが社会課題解決のカギになるのだと気づき、40歳にして一念発起、デジタル・テクノロジー分野にキャリアチェンジをしました。
今はジャパン・リスキリング・イニシアチブという非営利団体の運営をしながら、SkyHive Technologiesという、AIを使ってリスキリングのプロセスをワンストップで提供する会社の日本代表も務めています。現在51歳でAIに関する仕事ができているのは、40歳からの10年間コツコツとリスキリングを重ねてきたからだと言えるでしょう。
40代は初めて転職活動に挑戦して100社以上落とされるなど、非常に波乱万丈な日々を過ごしました。これからの日本では、多くの方が大なり小なり私のような経験をすることになるでしょう。そのような考えから、リスキリングというものを日本で広めたいと思い、2018年にひとりで活動を始めたんです。
欧米ではリスキリングは、デジタル化による技術的失業を未然に防ぎ、労働移動を実現するための手段として着目されてきた経緯があります。様々な論文や研究レポートも出ていますが、それらをきちんと押さえた上で情報発信しているのは、日本では一部の研究所の方を除いてほぼ皆無です。「学び直し」がリスキリングの日本語訳として定着してしまったこともあり、正しくない情報が流布している現状があります。
私自身の経験を活かし、成果が出るリスキリングのあり方について政策提言したり、企業の支援をしたりしているところです。