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“妄想”から事業を生み出す「DUAL-CAST」

アイデア起点の新規事業開発アプローチ──“妄想と具現”で事業を創造する「DUAL-CAST」とは?

出村光世氏(Konel 代表/プロジェクトデザイナー、知財図鑑 CEO/知財ハンター)

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新規事業開発者の悩みから生まれた「DUAL-CAST」のアプローチ

──出村さんは「妄想(Forecast)」と「具現(Backcast)」によって新規事業のアイデアを実現する「DUAL-CAST(デュアルキャスト)」のアプローチを提唱されました。ここまでの経緯を教えてください。

出村光世氏(以下、敬称略):Konel(コネル)では、企業の新規事業開発やアイデア創出の支援を行ったり、製品のプロトタイプ試作を行ったりといった支援を行ってきました。その中で触れてきた事業開発や商品開発、研究開発に携わる方々の悩みを解決し、新規事業を創出するためのアプローチとしてDUAL-CASTを提唱しました。

Konel 代表/プロジェクトデザイナー、知財図鑑 代表取締役 CEO/知財ハンター出村光世氏
Konel 代表/プロジェクトデザイナー、知財図鑑 CEO/知財ハンター
出村光世氏(Twitter:@dem_yeah

──いったいどのような悩みでしょうか。

出村:たとえば、「素晴らしいアイデアはあるのに、上司や経営層の同意・協力を得られず、社内調整が上手くいかない」という悩み。やる気やアイデアに満ち溢れていたとしても、判断を下す意思決定者が「実現できるかわからない、前例がなく確信が持てない」と感じれば、それ以上前に進めません。失敗も覚悟の上でチャレンジするのが新規事業ですが、未だ短期的な合理性ばかりを気にしてしまう組織は多いです。

 また、「自社の技術にどんな活用可能性があるのかわからない」といった声も耳にします。特にものづくり企業では、事業部門の人が把握し切れないほどの特許や技術資産を有している場合も多く、それらが活かされないまま眠っているケースが多いのです。

 反対に、「自社内だけでは活用できそうな技術がなく、事業のアイデアが浮かばない」という方もいらっしゃいます。無意識な“自前主義”に陥っているパターンですね。あるいは、社外の技術を探索してはいるものの、なかなか見つけられていないケースも考えられます。知財と企業のマッチングを支援している『知財図鑑』も、そうした課題を受けて立ち上げたメディアです。

なぜ「妄想」と「具現」が必要なのか

──そうした悩みから、なぜ「妄想(Forecast)」と「具現(Backcast)」の2つのアプローチが必要だと考えたのでしょうか。

DUAL-CAST引用:『妄想と具現 未来事業を導くオープンイノベーション術 DUAL-CAST』(日経BP)p.106-107[画像クリックで拡大表示]
「DUAL-CAST」の全体像
引用:『妄想と具現 未来事業を導くオープンイノベーション術 DUAL-CAST』(日経BP)p.106-107
[画像クリックで拡大表示]

出村:未来の姿を描いてから逆算で物事を組み立てていく“Backcast”は、最近では多くの企業で実践されています。戦略を練る上では欠かせない視点ですし、当然、新規事業を生み出す際にも必要です。DUAL-CASTでは、これを「具現」と呼んでいます。

 “Forecast”は、その反対です。現在から、ニーズがありそうな方向を予測的に探ってみる考え方です。そしてDUAL-CASTでは、ただ予測するだけではなく、自由に誰かに邪魔されることもなく、また萎縮することもなく、思うままにアイデアを頭の中に描いていく「妄想」を重視しています。新規事業の創出が「0を1にする」ことであるならば、妄想は「0を0.1にする」過程ですね。

 ほとんどの企業では、新規事業とは企画書や設計図があって初めて検討されるようになります。企画書がスタート地点なんです。これでは、自前主義や短期的な目線に陥っている企業では、アイデアが試される前に潰されてしまいます。資料は誰にでも均一のドキュメントを配布できて便利ですが、前代未聞の挑戦をいきなり資料にまとめて、社内の納得と協力を得るのは難しいのです。

 しかし、妄想には必ずしも企画書は必要ではなく、一枚のイラストから表現ができます。最近ではAIで描画することも可能です。そして妄想には本人の意志や情熱がこもりやすく、上手くハマれば他者を巻き込む強力なきっかけになると考えています。それを「ワークショップ」や「可視化」というプロセスに落とし込んだのが、DUAL-CASTの“Forecast”の部分です。

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この記事の著者

名須川 楓太(Biz/Zine編集部)(ナスカワ フウタ)

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