自社にとっての「リスキリング定義」推進ステップ
リスキリングは、組織の環境変化への対応が起点として行われるものです。よって、事業の方向性を踏まえて対象者ごとにスキル定義を行うことが重要となります。最初に、そのための推進ステップの全体像をお伝えします。
リスキリング定義は次図に示す通り、4つのステップで検討します。
ポイントは、事業の変化度合いの検討から始まり、次に特定職種に求められるスキルの変化度合いの検討、そしてスキルの網羅性の確保、運用を見据えたスキル定義というように、「事業 → 職種 → スキル」とつながりをもって対象を絞り込みながら検討していくことです。
それでは、順を追って各ステップの詳細を見ていきましょう。
STEP1:事業の変化の度合いと影響の検討
このステップでは次図に示す通り、外部環境・事業戦略・職種の3つの観点で、As Is(これまで)とTo Be(これから)、それぞれについて言語化することで、事業の変化度合いとその影響を検討していきます。
まず、起点は外部環境変化であり、この変化を受けて事業戦略がどのように変わるのかを言語化していきますが、事業戦略の変化の度合いは、おおよそ以下の3つに分類できます。
- 事業・業務の生産性向上
- 既存事業の付加価値向上
- 新規事業創出
自社の事業戦略の変化がどれに近いのか、あるいはどのウェイトが最も大きいのか、あたりをつけていきましょう。
その上で、事業戦略の変化を推進していくにあたり、特に仕事の内容や人員数に変化が出るのはどの職種かを検討します。この際、思い切って対象となる職種を絞っていくことが重要です。
もちろん、個別に検討を重ねた結果として全社員にリスキリングを要請していくことになる可能性はあるでしょう。しかし、戦略の変化を推進していくためにキーとなる職種は何かを特定することで、組織から従業員に要請する際に必要性をしっかりと伝えられ、受け手としても実践に活かしやすくなります。人事施策はつい一律に、と検討しがちですが、それでは「なぜこのリスキルが必要なのか?」という問いについて、一部の従業員の納得を得られないというケースに陥りやすいのです。
具体的な事例を交えながら解説します。あるメーカーでは、産業全体が技術革新に伴う大きな構造変化の真っただ中でした。しかし、既存事業にも需要があることで当面は事業が成立する見込みがあったため、新規事業創出に向けてリソースを投下しながら、既存事業・業務ではリソースを維持・縮小しつつも生産性を向上させることを事業戦略に掲げていました。
つまり既存事業の生産部門には、DXが進む中、より少ない人員で今まで通りの生産性を維持していく、という大きな変化が求められていました。