リスキリング推進の罠を回避する「必要性の発信」と「学習サイクルの構築」
連載の第1回において、リスキリングの推進には2つの罠があると紹介しました。1つ目は「スキル定義が出来ない/していない」こと。そして2つ目は、「組織からの押し付けで育成が進まない(学習が進まない)」ことです。
今回は、この2つ目の罠を回避するために、従業員の自発的な学びと実践を促進する仕掛けとして有効な、全社的な方針展開としてのリスキルの必要性の発信と、学習サイクルの構築についてお伝えします。順を追って、それぞれの詳細を見ていきましょう。
リスキリングの必要性を“全社として”発信する
まず、全社的な観点として、今後の事業戦略をふまえて従業員にリスキルの必要性を発信する必要があります。
全社として学びに関するメッセージを伝えていくことは、大げさだと思われるかもしれません。しかし、リスキリングとは組織の要請であるため、本気度を伝えるために関連部署で連携を取ってメッセージを検討してみましょう。この際、組織の要請を一方的に訴えるのではなく、人材マネジメントポリシーに照らして、会社として従業員に約束することも共に伝えていくことが肝要です。
人材マネジメントポリシーとは、「会社は社員とどう向き合うか、そしてどう生かしていくか」という、会社と社員の関係性を示すものであり、人事制度設計方針を固める前提となる「背骨」「よりどころ」です。図表2の例に示す通り、人事観点では、人事制度の設計方針や「求める人材像」につなげていくためのものですが、リスキリングの必要性を発信するという観点でも、親和性の高いものになります。
次のページで、人材マネジメントポリシーとメッセージ発信の具体的な事例を見てみましょう。