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ハルモニア松村氏と東大・野田氏が「価格・市場のデザイン」で促す、脱炭素のカギを握る「行動変容」とは?

「Climate Tech Day 2023」レポート

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 2023年6月25日に東京大学で開催された「Climate Tech Day 2023」。本イベントでは、近年注目度が高まっているClimateTech(気候テック)について、食料・農業、モビリティ、住居・ビルなど、様々な領域の研究者や起業家たちが議論を繰り広げる数々のセッションが用意された。本稿ではその中から、「市場・経済」と題されたセッションの様子をお届けする。登壇したのは、気候変動問題に「プライシング(価格決定)」の領域から挑むハルモニア株式会社 CEOの松村大貴氏、そしてこの問題に「マーケットデザイン」の領域から携わる、東京大学大学院 経済学研究科の講師であり、同学のマーケットデザインセンターでプロジェクトマネージャーを務める野田俊也氏だ。モデレーターは、東京大学 FoundX プログラムマネージャーの石田仁美氏が務めた。

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「脱炭素版〇〇」の発明だけでは問題解決にならない

石田仁美氏(以下、敬称略):現在、世界では毎年590億トンの温室効果ガス(GHG)が排出されていると言われています。この主な原因は、経済学で言うところの「外部性」。つまり、GHGが排出されても企業や個人に直接的な不利益がないことが、大量の排出につながっていると考えられています。

東京大学 FoundX プログラムマネージャー石田仁美氏
東京大学 FoundX プログラムマネージャー
石田仁美氏

 GHG削減に取り組むインセンティブがなく、取り組むためにお金もかかるということでは、なかなか社会全体を巻き込んだ動きは起こりません。このような状況をどうすれば変えられるのか。本日は、ハルモニア CEOの松村さんと、東京大学 マーケットデザインセンターの野田さんにお話を伺っていきます。まず松村さんから自己紹介をお願いできますか。

松村大貴氏(以下、敬称略):ハルモニアは、価格戦略(プライシング)に取り組む専門集団です。なぜ、価格戦略に取り組む企業が気候変動に取り組んでいるかというと、「『脱炭素版の〇〇』を発明するだけでは、カーボンニュートラルは実現しない」ことを問題意識として持っているからです。

 GHG削減には、新しいエネルギー源や素材など、供給側から各産業の脱炭素ソリューションを進めるのも大切ですが、一方で、それらを使う需要側をどうやってシフトさせていくか、あるいは需要をどう減らしていくかも重要になってきます。

ハルモニア株式会社 CEO 松村大貴氏
ハルモニア株式会社 CEO
松村大貴氏

 しかし、ビル・ゲイツが述べているように、環境に良い製品はそうでない製品に比べて価格が高いという「グリーンプレミアム」の課題が指摘されています。価格差が大きいままでは、お金に余裕があり行動するモチベーションのある人しか環境問題に取り組めず、価格差を負担できない国や企業は、気候変動対策に及び腰になってしまうでしょう。

 ハルモニアは、この問題を「価格」の面から解決しようとしています。当然、価格だけですべての問題を解決できるわけではありませんが、価格をデザインすることで、各人の道徳のみに依拠しないシステムをつくり上げ、個人や企業を動かしていきたいと考えているのです。

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この記事の著者

納富 隼平(ノウトミ ジュンペイ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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