課題ではなく、「現状の良いところ=ブライトスポット」に焦点をあてる
このリニューアルプロジェクトで特に象徴的なアプローチだったと、外部支援者であるコンセントリクス・カタリスト(以下CAT)や実施主体であるサントリーの双方が言及したのが、行動変容のアプローチをまとめた書籍『スイッチ! ──「変われない」を変える方法』(チップ ハース&ダン ハース/早川書房、2016年)に登場する「ブライトスポット分析」。定量・定性調査の次に行ったのがこの分析手法だ。このアクティビティは当初の計画にはなかったが、調査の結果を受けて導入された。
この後に詳しく解説する「プレモルメンバーズとしてのミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」を設定する前に、既存の顧客が何をプレモルの良さや特徴だと認識しているかを確認した形になる。
サントリーのメンバーとしても、このブライトスポット分析はこのプロジェクトで重要なシーンになったという。サントリーの是常氏は「すでにローンチしているデジタルサービスでは、課題を発見し改善するという発想になりがちだが、今回はサービスのリニューアルだったため、どんな姿を目指すのかという議論の方がマッチしていた。現状のサービスの魅力=ブライトスポットを把握し、強化するという発想で考えることを提案していただいたおかげでその後の議論が建設的かつ前向きに明るくなった」と語る。
チームメンバーがそれぞれブライトスポットを書き出した後は、プレモルという商品自体が持っている良さ(品質)と、プレモルと個々の顧客との情緒的な繋がりから生まれる良さ(感情の高まり)を区別し、整理を行った。
その上で、プレモルメンバーズがどの要素にフォーカスするべきかを検討した。結果として「ロイヤル層(プレモルへの愛着度が高い顧客)が感情の面で感じているプレモルの良さ」に特化してプレモルメンバーズを作っていくべきだとチーム全体で見解が一致することとなった。