iモードの開発とMBA留学を経て39worksを立ち上げ
──2023年6月、笹原さんは社長を務められていたドコモ・ベンチャーズからドコモ本体に戻られました。まずはこれまでのキャリアについて教えてください。
笹原優子氏(以下、笹原):ドコモに入社したのが1995年で、98年にiモードの立ち上げ部署に異動しました。99年2月にiモードがローンチしたので、その1年ほど前から参加していたことになります。私は端末側の仕様を担当していて、UIを作ったりサービスを追加するための仕様を書いたりしていました。その後もしばらくはプロダクト部というところで端末の商品企画を担当し、新規機能を追加したり、他社とコラボして新しいデザインの携帯端末を作ったりしていたんです。
中垣徹二郎氏(以下、中垣):デザイナーズ携帯とか、流行りましたね。懐かしい。
笹原:そうそう。そのようなトレンドがあった時代にプロダクト部で過ごした後、2012年から1年間MBA留学をしました。戻ってからはごく短期間ですがマーケティング部に所属し、2014年10月にR&D部門の中のイノベーション統括部からの出向という形で1年半ほどドコモ・ベンチャーズで働いていました。
──社長に就任される以前にも、ドコモ・ベンチャーズに関わっていたんですね。
笹原:そうなんです。スタートアップと一緒に新規事業を創ろうということで、スタートアップと一番接点があるドコモ・ベンチャーズに転籍しました。そのときに39worksを立ち上げ、出向元のイノベーション統括部に戻ってからも運営を続けました。そして2021年から2年間ドコモ・ベンチャーズの社長を務め、今年の6月にドコモに戻ってスマートライフカンパニー ライフスタイルイノベーション部の部長をしています。
iモード時代から始まっていたオープンイノベーション
──ドコモにおける新規事業開発の取り組みは、2014年にイノベーション統括部ができてから本格化したのでしょうか。
笹原:それまでは、iモードの部署が新規事業開発をやっていたという感じです。
中垣:iモード自体がものすごい新規事業でしたからね。既存の通信ビジネスを飛び越えるような。
笹原:はい。さらに着信メロディーのダウンロードサービスができたり、ICカード乗車券などの電子マネーが使えるようになったり、飲料メーカーさんの自販機でQRコードを写して飲料を買う仕組みができたり。いろんな形の事業が携帯電話をハブにして生まれていきました。
中垣:アプリケーションだけでなく端末の中の技術も新しかったから、その領域のスタートアップとの取り組みもたくさんあったでしょう。
笹原:そうですね。当時はドコモ・ドットコム(NTTドコモ100%出資の戦略子会社)という会社があって、そこがスタートアップに出資をしたりもしていました。その頃からオープンイノベーションをしていたことになりますね。
中垣:その中にその後大きくなった会社もありますね。ACCESSとかアプリックスといったスタートアップが携帯に組み込むブラウザを作ったりしていたんですから、すごい世界でした。