不動産ビッグデータを活用した「不動産ローンの信頼性維持」
金融機関と協業している取り組みもある。
2018年、女性専用シェアハウスを購入した不動産投資家たちがローン返済できず自己破産者が続出した「かぼちゃの馬車事件」が起こり、大きな社会問題になった。
金融機関は不動産融資相談の際に「事業計画書」と呼ばれる物件の収益性とローンの返済計画をまとめた書類を受け取り、金融機関の融資審査担当者は事業計画書の妥当性を図るべく、正確な判断を行うための情報収集を行う。かぼちゃの馬車事件では、運営会社の事業計画が粉飾されていたこと、融資を行う銀行が事業計画の粉飾を知りながら黙認したことから、犯罪性の高い事例だった。しかし、こういった意図的なケース以外にも実は不動産融資に関しては課題があることがわかってきた。
具体的には、融資判断を銀行の行員の経験に委ねたり、中長期視点からのリスク検証が不十分だったり、紹介事業者が仲介に入った場合に、顧客理解が不十分なままある程度事業計画を鵜呑みにせざるを得ない状況があったりという課題である。融資担当者は本来、妥当性を判断するために類似物件の賃料や間取り、構想、設備等を確認して融資の妥当性を測るなど、様々な方法で与信審査を行うが、膨大な業務がある中で、地道な調査を行うことは難しいのだ。この対策には、やはりデータ分析による基準作りが必要である。
そこでLIFULLは、金融機関向けソリューションとして、地図情報システムに不動産ビッグデータを連携することで、アパートローンの融資審査に必要な物件の収益性、資産性の判断に必要な、賃料予測、入居率予測、収益予測を提供できるようにし、高度な与信審査を行う支援をしている。これによって不動産ローンの信頼性を維持しやすくなるほか、行員の業務効率も改善している。
企業の垣根を越えた事業開発は“出会い”から
LIFULLは社会課題の解決に取り組み、事業の種を発掘しようとしてきたが、世の中には様々な社会課題があり、LIFULL一社だけで取り組むには限界がある。本記事で紹介した4つの事例は、他社との議論の中で「そういうやり方があったのか」と発見しながら生まれてきた新規事業である。
オープンイノベーションでの事業推進においては、目的意識の共有と共感が重要だ。LIFULLは今後もパートナー企業とともに社会課題に向き合って新規事業を作っていきたいし、LIFULLのビッグデータを使ってできそうなことがあればぜひ気軽に声をかけてほしいと内田氏は呼びかけ、講演を締め括った。