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再現性のあるイノベーション経営の型

NTT西日本のQUINTBRIDGEが場として構想する、日本流のイノベーションと西田哲学的な思想とは

【後編】ゲスト:西日本電信電話株式会社 代表取締役社長/社長執行役員 北村亮太氏

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QUINTBRIDGEの根底に流れる「日本的な人間観」

紺野:最後に、QUINTBRIDGEを通じた御社の今後の展望や期待を語っていただきたいです。

北村:QUINTBRIDGEには非常に可能性を感じています。日本全国のイノベーションの起点・結節点になるポテンシャルを秘めていると思いますし、NTTグループが次世代の社会的企業に生まれ変わる原動力にもなると思います。実際に、QUINTBRIDGEの設立以降は、NTT西日本へのニーズも変化していて、社会課題解決を求める声が明らかに増えました。この変化は世の中からの期待の現れだと思いますので、その期待に応えられるよう活動を続けていくつもりです。

紺野:本日、お話を伺っていて感じたのは、NTT西日本のオープンイノベーションは非常に日本独自のものだなということでした。欧米のメガプラットフォーマーのように、自社のエコシステムのなかにステークホルダーを取り込むのではなく、対等な立場で共に作り上げていこうという意思を感じました。

北村:それはQUINTBRIDGEが「Self-as-We」を理念に掲げていることに関係しているかもしれません。Self-as-Weとは、京都大学文学研究科教授で哲学者の出口康夫氏が提唱した概念で、「われわれとして自己」という意味です。個人主義的な自己観から脱却し、We(われわれ、わたしたち)の単位で物事を考え構想していこうというわけですね。NTTグループでは、2021年に出口氏の提言を受けて、Self-as-Weを基盤とした「サステナビリティ憲章」を制定したほか、2023年には共同で一般社団法人「京都哲学研究所」を設立しました。

Self-as-We

紺野:確かにそれはQUINTBRIDGEのオープンイノベーションに相通じるものがありますね。京都哲学研究所では西洋哲学とアジア的な哲学の共存を目指していると伺っていますが、今まさに自己と他者を厳密に区別しない、日本的な哲学や人間観が次世代のオープンイノベーションに求められているのかもしれません。

北村:そうですね。オープンイノベーションに取り組むうえでは、単独の企業が利益を総取りするのではなくて、広く叡智を集めて共に事業を創り上げていくのが、日本的なあり方ではないかと思います。私自身も、戦前の日本を代表する哲学者 西田幾多郎の哲学の流れを汲むSelf-as-Weの理念に非常に近しいものを感じています。

紺野:西田幾多郎が提唱した「絶対矛盾的自己同一」という概念は、一見対立して見える自他が実は相補的に存在していて、根源では同一となると、主客未分を説くものでした。これは私たちの「場」の論理の根幹にある考えです。たしかに、社内外の壁を取り払い、多様なステークホルダーが一つになってイノベーションを創出する、QUINTBRIDGEの方法論と似たものを感じますね。QUINTBRIDGEの根底にも西田哲学の思想が流れているというのは驚きでした。大変興味深いお話が聞けてとても満足しております。北村さん、本日はありがとうございました。

画像を説明するテキストなくても可

対談後記:北村社長との対談を振り返って(紺野登)

 今、日本では、大企業のみならず、100年レベルの歴史を持つ伝統的企業も、多くが未来への成長を試行している。単に過去の延長線でのサステナブル(持続する)でなく、未来の価値を生成する(ジェネラティブ)ことが課題だ。

 かつて経済学者のアマルティア・セン氏は、日本経済の成功の秘訣は伝統と革新の連続だと喝破した。今日本企業に求められているのは、過去のシステムを維持しつつ未来のシステムを構築していく、中長期視点でのトランジション(遷移)の時期の経営だ。それは現在と未来の両利きだ。

 そこで重要になるのが、未来のステークホルダーとともに試行錯誤していく「場」だ。QUINTBRIDGEにはそうした思い(「Self-as-We」)が込められている。そこではIMSのようなシステムが共通言語、相互に理解発展する共通尺度として重要になってくる。過去のストーリーを反復するのでなく、新たな未来のナラティブ(自らが紡ぎ出していく)こそ、再現性を持ったイノベーションなのである。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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