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「新規事業提案制度」事務局運営のリアル

なぜリコーの「TRIBUS」は全社を巻き込み続けられるのか──事例とともに紐解くプログラム継続の秘訣

第1回 ゲスト:リコー TRIBUS 森久泰二郎氏(後編)

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一人ひとりの想いに寄り添った「挑戦の場作り」

森久:TRIBUSではビジネス以外でも挑戦の場を設けるようにしています。たとえば、以前NHKの「魔改造の夜」という番組で、エンジニア同士が対決する企画があり、TRIBUSコミュニティでも同様の挑戦を呼びかけたことがありました。その結果、参加したエンジニアたちがペンギン型ロボットを作って出場し、さらに番組の企画を超えてギネス記録に挑戦し、新記録を達成しました[1]

 嬉しかったのはその後、彼らの中に、カーブアウトした新規事業のCPOに就任したり、自ら新規事業を提案し立ち上げに挑戦したり、TRIBUSでスタートアップの伴走支援の役割を務める方が出てきたことです。彼らの技術的な挑戦を後押しする機会を作ることで、ビジネスや新規事業への意欲を深めてもらう一助になるという手応えを持ちました。

鈴木:TRIBUSならではの挑戦の場作りといえば、本社以外の拠点でもプログラム説明会を積極的に実施するなど、地方もとても巻き込んでいらっしゃる印象です。

森久:そうですね。特にコロナ禍前には、全国津々浦々プログラムの担当者が足を運んでいました。今はプログラムの実施も、オンラインが主体のハイブリッド形式になっていますが、地方拠点の社員も、首都圏の社員とほぼ同じ機会を得られるようになり、とてもポジティブな反応をいただいています。現在は、沖縄からの参加者もいらっしゃるんですよ。

鈴木:きっとその反応は、コロナ禍前に、地方の社員の方と直接やり取りされたことで、TRIBUSの本気度が伝わったことがベースにあるのでしょうね。

森久:地道にTRIBUSを続けていく中で、参加者や関係者の方々の意識が自然と変わっていくのを感じています。最初は「お祭り騒ぎ」や「自分たちでスタートアップと組めるのに」といった声も少なからずありましたが、年を重ねるごとに変化が見られてきました。

 たとえば、リコーのお取引先からTRIBUSの事業について質問されるようになったり、スタートアップ側から能動的にリコーとの協業を求めてこられるようになったりしています。こういった変化は、参加者や共創してくださった各部門の方々のおかげだと思います。

 ただ最近、こういった変化を、社内にもっと具体的に見せていく必要があると感じました。そこで、2023年12月から社内向けのポッドキャストを始めました。さらに5月からは外部向けのポッドキャストも開始し、月に1~2回のペースで情報発信を行っています[2]。ピッチやプレスリリースが出るまでの間の、各プロジェクトの過程もお伝えしていこうという意図があります。

鈴木:たしかに、大企業がスタートアップと一緒に新規事業に取り組む場合、一般的にサービスがリリースされるまでにある程度時間がかかり、その期間は公の場ではオープンにできない情報がたくさんあります。だからこそ、伝えられることはクイックに伝える意義は大きいですね。

森久:そうなんです。また最近は、事業の“その後”を見せるという取り組みも始めました[3]。TRIBUS6期目を迎え、採択された事業の中には畳むものや売却するものも出てきています。これらのリアルな結果も含めて公表することで、次のチャレンジにつながると考えています。

 先日、「TRIBUS卒業式」というイベントも開催しました。TRIBUSから正式な事業部門に移管になったものを含め、これまで行ってきた5年間の事業の軌跡を発表する場です。オンラインのリアルタイム視聴で700名ほどの方に視聴いただき、山下会長から「TRIBUSで事業を創ったことに胸を張ってほしい」というメッセージもいただきました。

鈴木:卒業式では他社に転職が決まったTRIBUS運営メンバーにも卒業証書を渡す場面や、涙を流されている人も多かったとお聞きしました。「TRIBUS」の「TRI(3)」が、リコー創業者・市村清の、「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」の想いを込めた「三愛精神」に由来するように、本当に人を大切にされているのがわかります。

森久:人を大切にすることは非常に重要だと考えています。一人ひとりの想いを大切にしてこその新規事業だと捉えていますね。


[1] 株式会社リコー「NHK BSプレミアム 魔改造の夜“Rコー”開発マシンに迫る

[2] TRIBUS「TRIBUS ポッドキャストを開設しました。

[3] 株式会社リコー「TRIBUS社内起業家1期生のネクスト・ステージへのチャレンジが決定~「事業」「人」「挑戦する文化」を育てるTRIBUSの共創イノベーションの環がさらに拡大~。

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部門のミッシングピースのためだけではない協業のあり方

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この記事の著者

皆本 類(ミナモト ルイ)

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