デザインは「専門職能」から「ソフトスキル」へ
続けて、「それが意味するのはデザインのソフトスキル化です」と本村氏は力強く訴えた。従来、デザインは専門的な職能と理解されていたため、その活動の多くをデザイナーが担っていた。
しかし、生成AI時代においては、あらゆる人がデザインの主体になり得ることから、幅広い職種にデザインへの理解が求められる。この変化を、本村氏は「デザインのソフトスキル化」と表現し、従来はデザインと関係が薄いと見られていた職種にもデザインの習熟が必要だと呼びかけた。
以前から、本村氏が所属するゆめみは、内製化支援事業の一環として非デザイナー人材にデザインへの習熟を促すサービスを提供してきた。それが「デザイン・イネーブルメント」だ。デザイン・イネーブルメントはDesignとEnablement(できる状態にすること)を組み合わせた造語。同社が独自に開発したアプローチにより、非デザイナー人材にもデザインが実践できるよう促していく。
デザイン・イネーブルメントは理論的にも体系化されており、その概念を解説した論文は、デザインマネジメントについての国際学会「24th DMI: Academic Design Management Conference(ADMC 2024)」で採択[3]された。
デザイン・イネーブルメントによる支援活動も着実に成果を表している。
例えば、クレジットカード事業のJCBでは、従来、新規事業開発の際には事業ごとにデザインの活動を行なっていたため、個別の事業ごとに制作物としてのデザインに関する意思決定が発生し、リリースまでの工数が増大するという課題を抱えていた。しかし、デザイン・イネーブルメントという考え方を体現した「デザインシステム」の構築および適用により、新規事業開発向けのデザインを実践するプラットフォームが構築され、新規事業開発に携わる誰もが共有した枠組みでデザインを実践できるようになった[4]。
そのほか、小野薬品工業[5]やNTT東日本[6]など、幅広い業種業態の企業にデザイン・イネーブルメントを軸としたがサービス提供されており、組織一体となったデザイン活用の底上げに貢献している。
最後に本村氏は、将来の展望として「いずれ人間のデザイナーを超えるような生成AIが登場するように感じています」と述べた。そして、そうした時代においては「生成AIを利用して何を行うのか」を設定するのが、デザインにおける人間の役割になるはずだと話し、セッションを締めくくった。
「生成AI時代においては、デザインの活動において『何のために活動するのか』『何に取り組むべきなのか』『自社にとってより良い状態とは何なのか』といった目的や価値観の部分を、人間が担わなければいけません。そのため、企業は自社の理念やミッションを自覚する必要があるでしょう。自社のこれまでとこれからを見つめ直し、自らの存在意義を見極めるのが、生成AI時代に向けて企業が取り組むべきことなのかもしれません」(本村氏)
[3]株式会社ゆめみ『株式会社ゆめみ、デザインマネジメント分野の国際カンファレンス「ADMC2024」に、執行役員の本村と立命館大学八重樫教授の共著による論文が採択』(2024年6月25日、プレスリリース)
[4]ゆめみの支援事例(JCB社)『JCBがゼロから始めたデザインシステム構築 その裏側をデザインチーム発足から振り返る』(CreatorZine、2024/09/20)
[5]ゆめみの支援事例(小野薬品工業)『ゆめみ、小野薬品の社内ビジネスコンテスト「HOPE」の取り組みに伴走し、新規事業立案の支援を開始』/『ゆめみが新規事業の伴走支援を提供した小野薬品のビジネスコンテスト「HOPE」が2024年度グッドデザイン賞受賞』
[6]ゆめみの支援事例(NTT東日本)『NTT東日本|デザインを組織の強みにする、UXUIスキル向上プログラムを提供。ご担当者様・ゆめみ担当者による特別座談会』
ゆめみの手掛けたプロジェクト・実績紹介
- 支援事例1:小野薬品工業|ボトムアップで新規事業の開発を目指す、社内ビジネスコンテストを支援。ご担当者様・ゆめみ担当者による特別座談会
- 支援事例2:ジェーシービー|ゼロからデザインシステムを構築し、成長し続ける仕組みづくりも。ご担当者様・ゆめみ担当者による特別座談会
- 支援事例3:NTT東日本|デザインを組織の強みにする、UXUIスキル向上プログラムを提供。ご担当者様・ゆめみ担当者による特別座談会
■ゆめみの手掛けた「プロジェクト・実績紹介ページ」