沖電気工業がIMSを事業変革の軸に据えた理由
「OKIの全員参加型イノベーションと創出事例」と題し、沖電気工業の藤原雄彦氏がまずは講演を行った。冒頭では、IMD(International Institute for Management Development、国際経営開発研究所)による2024年版「世界競争力年鑑」について言及。このなかで日本の競争力の順位は世界で38位と、前年の35位から順位を落としたほか、「ビジネス効率性」は51位と低迷するなど、「深刻な状況にあることを認識してもらいたい」と藤原氏は話した。

次に、沖電気工業でのイノベーション創出の取り組みについて説明。同社はもともと、通信キャリアや金融機関、官公庁を顧客に受注開発型のビジネスを手がけてきた。特に通信関連事業、ATMやプリンターの製造販売で収益を上げてきたが、技術の進歩によってキャッシュレス化・ペーパーレス化が普及し、将来の売上が縮小することは自明となっていた。
そこで新たな事業の柱を生み出すべく、2017年にIMS(イノベーション・マネジメントシステム)を導入。2031年以降も持続可能な企業となることを目指し、当時の鎌上信也社長(現 取締役会長)のリーダーシップのもと、IMSをコアにして会社のカルチャーを変える取り組みが始まり、現在に至っている。
そうした活動の中で、同社はISO 56000シリーズのガイダンス認証であるISO 56002を活用。藤原氏は、Japan Innovation Network(JIN)代表理事の紺野登氏から「IMSに書かれていることは、つまみ食いせずにすべてやらないとイノベーションは起きない」(全体をシステムとして捉える)と指導を受けたといい、これを遵守しながら取り組みを進めていると話した。

「まずは、社長の『絶対にイノベーションを生み出す』という強い意志が必要です。その次に、教育。我々もJINさんからご指導いただきながら、ISO 56001(認証規格)に基づく各項目を自社の取り組みへとブレークダウンしていきました」(藤原氏)
藤原氏は、日本の製造業はこれまでイノベーションのプロセスの中でも「ソリューションの開発」「ソリューションの導入」に力を入れてきたと説明。しかし、その前段のプロセスである「機会の特定」「コンセプトの創造」「コンセプトの検証」が不足しており、徹底的な顧客志向になれていなかった。これが日本の競争力低下の大きな要因ではないかと、同氏は指摘する。
こうした点を踏まえ、沖電気工業ではIMSの実践に向けて「ビジネスモデルキャンバス」を活用している。
「まずは顧客のことを考える。これが最も大切です。誰がどんな困りごとをもっているか、その困りごとに対してどのような価値を提供するか、そしてどんな手段でそれをやるかという順で考えないと、お客さんに買ってもらえるものを生み出せません」(藤原氏)