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東亜新薬増田氏に聞く、「ビオスリー」が60年以上売れ続ける理由──新市場開拓戦略によるイノベーション

第8回 ゲスト:東亜新薬 増田将之氏

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他社を巻き込み売上向上と業務効率化を実現

大角:「ビオスリー」が、プロモーションやポジショニングの戦略によって、競合製品と差別化してきたことは理解できました。一方で、事業を成長させるための具体的な施策に関して、工夫してきたことはありますか。

増田:事業を成長させるためには、売上向上の施策と、業務効率化などによるコスト削減の施策が重要ですが、当社はその両方を他社との協力関係を活用しながら行ってきたことに特徴があります。

 まず、売上向上の施策は、数量にアプローチする施策と単価にアプローチする施策という2つに大きく分かれます。前者は、購買決定プロセス「AIDMA」モデルにおけるA(Attention:注意)からD(Desire:欲求)、あるいはM(Memory:記憶)までを担うマーケティングと、最後のA(Action:行動)を引き出すフィールドセールスの両輪をうまく機能させることが重要です。そこで、マーケティングでは、製品の研究開発を担う東亜薬品工業と共通の会議体を持つなどして連携を深めつつ、販売総代理店である鳥居薬品の人脈や情報網を活用して製品に共感してもらえる医師を集めることにより、マーケティングを強化しました。マーケティング戦略を活かすために、フィールドセールスを担うMRには、活動方法とそれに伴う教育研修と評価方法も一新しました。

 一方、単価へのアプローチ施策でメインとなったのは、「ビオスリー」で「不採算品再算定」の認定を受けることでした。不採算品再算定とは、医療上必要性が高いものの薬価が低いために製造販売の維持が難しい医薬品について薬価を引き上げる制度です。この認定を受けるためには、東亜薬品工業との連携が欠かせませんでしたし、実際に卸さんから医療機関に適正な価格で取引してもらうためには、鳥居薬品の協力が不可欠でした。

 さらに業務効率化の施策は、製品の輸送を担う中央運輸と共に取り組んだ物流改善が挙げられます。従来は、工場から東亜新薬で一度製品を積み替え、さらに鳥居薬品でもう一度積み替えていたのですが、商品を載せる台を統一する「ワンパレット」の手法で、工場から鳥居薬品まで積み替えなしに輸送できるような仕組みを整えました。

大角:自社のみならず、他社も巻き込んで売上を向上させ、業務も効率化してきたということですね。とはいえ、ほぼ「ビオスリー」という製品のみで、60年以上も会社が成長し続けていらっしゃるのは、やはり不思議な気がします。

増田:「ビオスリー」とそれに関連した事業だけで、すべての商流を網羅できることが当社の強みかもしれません。

 私が代表取締役社長に就任した時、収益構造を見直そうと思い、疾病治療と未病予防、健康維持、健康増進という4つの健康ステージに各事業を整理してみました。そこで気づいたのが、疾病治療には「ビオスリー」を販売する医療用医薬品事業、健康維持・増進には健康食品事業が該当し、未病予防には、今はまだありませんが「ビオスリー」のOTC薬品を販売する事業が当てはまること。疾病治療はBtoBtoC、未病予防はBtoB、健康維持・増進はBtoCですから、「ビオスリー」とその関連事業を展開するだけでもそれらを一通りカバーできるといえるでしょう。

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この記事の著者

山田 奈緒美(ヤマダ ナオミ)

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