PurposeとBehaviorsを実現する、手段としてのスクラム
芦村:私のグループでは2024年10月から全部の業務をスクラムで回すようにしました。もともとはソフトウェア開発やモノづくりの業務で使われてきたフレームワークなので、最初は独自の用語やそれぞれの仕事の大きさを見積もって数値化するということに慣れませんでした。しかし、やっていくうちにだんだんと理解が進み、自分たちの仕事もモノづくりと同じように考えられるんだと気づきました。
持っている仕事を分解し、2週間という期間でどういうプロセスでどこまでやるのかをみんなで考えて可視化し、それを毎日レビューする。遅れていれば「私、手伝おうか?」というやり取りもあります。これを日々やっていくとチームの団結も強くなりますし、これまでは「自分の仕事じゃないから口を出すのはやめておこう」と遠慮したりしていたことも、自然に手助けができるようになっています。
日々コミュニケーションが取れることでチームの仕事は効率的になりましたし、1つのチームで解決できないことがあれば、さらに上位のスクラムに上げて組織横断的に解決することもできるようになりました。
安井:働き方が大きく変わるので、それを定着させるには考え方も変えなければいけません。今は、形としてできるようになってきたところで、「考え方を変える」という本質的なところはまだまだこれからだと思っています。
宇田川:そうですよね。CXの改善を試行錯誤する中で、「スクラムという手法って使えるな」とみんなが実感していく過程があったり、顧客体験を可視化するツールを使う中で、その使い方が分かってきて、分かるとまたやってみよう」という過程があったり、いい循環が生まれますよね。
安井:瀬戸が社長になって、「Purpose(存在意義)」と「LIXIL Behaviors(3つの行動)」を定めました。LIXIL Behaviors(3つの行動)は「正しいことをする」と「敬意を持って働く」と「実験し、学ぶ」です。短く小さく実験をして、その成果をもって、止めるなら止める、続けるなら大きくしていく、ということを繰り返しましょうと、常に言いつづけています。完璧じゃなくてもいいからやってみて、そこからフィードバックを得てもう一度チャレンジしようという考えがかなり浸透していると思います。

宇田川:なるほど。そういった行動指針や戦略上の大方針みたいなものをトップがしっかり出しているから、現場のスクラムの取り組みも望ましい方向に向かっていくわけですよね。でも、多くの企業ではトップが方針を決めて伝えるということができていません。