“5つの出口戦略”を徹底解説
「出口戦略」とは何か。ビジネスにおける資金や人員というリソースは有限であり、争いに決着をつけるための想定を立てて戦いを開始するという考え方が出口戦略である。
これがスタートアップ投資に転用されるようになった。投資をしてスタートアップの未上場株を取得しても、現金化できない株は価値を発揮しない。そのため投資家には、その株を買い取ってくれる売却先を見つけるか、上場(IPO)後に市場で売却して現金化するイグジットプラン(出口戦略)が求められる。
企業内の新規事業では株式を発行しない。そのため厳密にはスタートアップ投資のような出口戦略は必要にならない。だが、新規事業の立ち上げに要した資金を回収するという出口は求められる。欲を言えば、陳腐化しつつある既存事業に置き換わるほどの事業となってほしいという願いが込められていることもあるのだ。
ただし、累積黒字化や中核事業化といったゴールイメージは、どれにも当てはまるがゆえに「戦略」とは言い難い。ここで言う出口戦略は、ゴールに至る過程で迎える中間的なマイルストーンである。したがって、企業内の新規事業における出口戦略とは、あくまでも途中の立ち位置の変化、特に「オーナー」の変化を指す。
前述したように、スタートアップの「出口」とはVCの持ち分が流動化する時点を指す。他方の企業内の新規事業においては、「オーナー」が変わることを意味する。それまでは研究開発部門や新規事業部門、経営企画部門がオーナーだった新規事業を卒業して、オーナーが変わることが「出口」なのである。
企業内新規事業における出口のオプションを、以下に5パターン記す。
1:事業部吸収
既存事業部が新規事業を取り込むパターン。新規事業へ着手した際に想像しやすい着地点だが、事業部に影響を与えない程度に小さな新規事業でない限り、取り扱いが困難である。
2:事業部化
新規事業が別の事業部として成長するケース。企業にとってある意味理想的だが、事業部長の人事で揉めることが多い。
3:完全子会社化
事業部長の人事に答えが出ないとき、子会社化の案が浮上することがある。最初からこのオプションを検討しておくことも有効だろう。
4:スピンオフ
子会社化の検討を開始すると、投資額を抑えるために外部資金を活用する案も出る。この案も最初からオプションとして検討するべきだろう。
5:スピンアウト
資本関係のない新会社を設立するパターン。誕生した社内新規事業が、様々な理由で本体と完全に切り離されるオプションも存在する。

「新規事業が社内で評価されない」という愚痴はよく聞くが、そのメカニズムは既に『イノベーションのジレンマ』で解明されている。既存事業と比べて遥かに小さな事業であり、人事や事業モデルの混乱も招き、将来性も不透明。さらに言えば、株主が期待するリターンをもたらしそうにない新規事業はそもそも望まれていない。20世紀末からクレイトン・クリステンセンはこのように断じているのだ。
しかし、クリステンセンは大企業もこうした新規事業を生み出さなければならないとする。それは、いずれ破壊的なビジネスモデルで市場に現れるスタートアップに、現在の市場を奪われてしまうからだ。このように「ジレンマ」を乗り越えるよう促していたのだ。