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その新規事業、死んでいませんか?──ゾンビ化を防ぐ「出口戦略」の処方箋

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「撤退できない新規事業」が生まれるワケ

 新規事業の出口戦略の重要性について述べた。しかし、出口に向かっているのかどうかわからないようなプロジェクトが存在してしまうのも事実だ。新規事業に限らず、進捗が芳しくないプロジェクトが一定数発生するのは仕方ないだろう。ましてや、新規事業は難しい。進まなくなってしまう「ゾンビプロジェクト」は簡単に生じてしまうのだ。

 そもそも新規事業は「撤退基準」を定めてから着手するものなのだろうか。この問いについて調べてみると、多くの企業で撤退基準は設定されていないのが実態である。一部の組織では一定の基準は設定していると言うが、しっかりと適用されているかと尋ねると、ほぼ間違いなく設定はされていないと返答がある。

 どこの企業においても「やめたい」「やめたほうが良さそうな」プロジェクトがあり、類型化してみると、以下のようなパターンに収斂する。

  • シナジー皆無型:既存事業とのシナジーが見込めず、リアリティが低いため投資判断がしにくいもの
  • 売り手目線型:自社都合で構想され、顧客に価値を提供できないもの
  • ビジョン過剰型:理想論と抽象度の高い方向性ばかりが示されているもの
  • 魂入れず型:事業構想は存在するが人の行動が伴っていないもの
  • コンコルド型:スタートアップや技術開発に既に大きく投資がされているため見直しの判断が難しいもの

 新規事業プロジェクトは立ち上げるのが難しい。しっかりとしたアクセラレーションプログラム(社内ビジネスコンテスト)が制度化されている企業であっても、何回かの審査を経てプロジェクトが承認される。制度が整備されていない企業ならもっと大変で、色々と根回しをしながら経営層の承認を得て、やっと新規事業プロジェクトが発足する。

 そこまで苦労して立ち上がったプロジェクトは、思い通りにならなかったとしても、中止するという判断をするのは正直なところ難しい。そのような場合には、かなり大きなエネルギーが必要となる。

ゾンビプロジェクトのタイプ

ゾンビプロジェクトの症状とリスク

 先ほど型を示したゾンビプロジェクトには、アイデアとして優れているかもしれないが、そのままの形では進まなくなっているという共通点がある。アイデアが悪くないだけに変えられなくなっていたり、テーマがその企業にとって重要だから撤退という大きな判断ができなかったりする。事業としては成長しきっていないが、そのまま存続している。このようなプロジェクトが「ゾンビプロジェクト」である。

 ゾンビプロジェクトを放置すると、新規事業への投資額が膨らむ。だが、その投資額は問題のごく一部だ。放置をしたまま「ゾンビ化」したプロジェクトが多数存在していると、「わが社では新規事業は成功しない」「新規事業は金食い虫だ」と、組織風土や企業文化そのものが新規事業を排除してしまう。そんなトラウマ的な「見えないが大きなダメージ」につながるので注意したい。

 そんなトラウマ的な「見えないが大きなダメージ」につながるため、新しい事業はゾンビ化する前に評価を行い、適切な処置を施すことが必要になる。

【ゾンビプロジェクトの症状:2つ以上当てはまるなら要注意】

  • 目的未達成:当初の目標を達成できないまま存続
  • 経営資源の浪費:人的・財務的リソースを消費
  • 心理的要因が大きい:担当者が失敗を認められず、確証バイアスや感情ヒューリスティックに影響されて継続

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ゾンビプロジェクトへ5つの処方箋

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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