多様な事業経験を体系化し、再現性ある成功モデルを社会実装する
──豊富な経験を積まれた北嶋さんが、独立・起業を選んだ理由をお聞かせください。
北嶋:それまでの新規事業で得た知見に再現性を持たせて様々な企業に実装できれば、日本社会にとって非常に価値があると考えました。当時も新規事業支援を謳う会社はありましたが、その多くは「特定の会社の成功事例」や「シリコンバレー手法の輸入」といった断片的なものでした。
私は幸いにも、多様な企業で、様々な立場から新規事業に向き合ってきました。あらゆる企業に通用するレベルまで新規事業を体系化するには、この経験が不可欠であり、それを実現できるのは自分しかいないのではないかと考えました。単にお金や口を出すだけでなく、人や技術などのイノベーションキャピタルも包括的に提供し、ともに事業を生み出せるプラットフォームやインフラを作りたかったのです。
──その理念の背景には、既存の支援業界への強い問題意識があったのでしょうか。
北嶋:そもそもRelicは自分たちもリスクを取って共創しているのであって、支援者とか支援業界という括られ方をすること自体に違和感もありますが、いわゆる支援者側のレベルを、もっと引き上げる必要があると強く感じていました。挑戦するクライアントやパートナー以上に、私たち自身がリスクを取り、挑戦していなければ失礼ですし、説得力がありません。
プロフェッショナルの知見、プロダクト・テクノロジー、そしてインベストメント。この3つを三位一体で提供することが、日本企業の変革には必要です。それらをワンストップで提供し、日本企業と共に事業を創造する「インフラ」を構築したいと考えました。
寄せられる相談は日本随一。10年で唯一無二のポジションを築く
──創業から10年で、どのような実績を積み重ねてこられましたか。
北嶋:これまで大企業からスタートアップまで5,000社以上の企業にプロダクトやサービスを提供し、共創してきました。
大企業では、大手通信企との取り組みは特に思い入れがあります。創業当初からのお付き合いで、制度面の進化と多様な事業創出の両面で成果が出ています。最初はオープンイノベーションプログラムから始まり、人事部や経営企画部と連携した全社的な新規事業プログラムへと発展。さらに、外部で機動的に動くべき事業の出口戦略としてカーブアウトやスピンアウトを前提とした現在の形に進化しています。この制度からは、創設後1年ほどで5〜6社がスピンアウトし、将来の上場を狙える企業も生まれています。
スタートアップでは、IoTデバイスを手がけるハードウェアスタートアップ企業が印象的です。創業当初から支援に入り、月数台しか売れていなかったハードウェア売り切りモデルから、ハードウェアを無償提供する代わりにソフトウェアで月額課金を得るビジネスモデルへと転換させました。マーケティングやインサイドセールスの仕組みも構築し、月数十件のサブスク契約が取れる体制を整え、後に上場まで至る礎やきっかけ作りに大きく貢献できたと思います。
その他、上場AIベンチャー企業も、立ち上げ期からともに戦略を練り、現在も順調に成長を続けています。
この10年で、ありがたいことに日本で最も多くの新規事業に関する相談や協業依頼が集まるポジションを築けたと感じています。大企業、スタートアップ、自治体、大学などから幅広くお声がけいただける、「『株式会社日本』の新規事業開発室」とでも言うべき存在になってきたと自負しています。