「守りと攻め」で実現する、両利きのIRの経営へのインパクト
栗原:従来型のIR活動と、LENZ&Co.が提唱する「IRX(Investor Relations Transformation)」は、具体的に何が決定的に違うのでしょうか?
長谷川:目的から役割、連携体制まで、すべてが異なります。比較表で見ていくと、その違いは明確です。

1つ目は「目的と時間軸」です。従来型IRの主たる目的は、法令遵守のための「説明責任の遂行」にあり、コミュニケーションは必然的に過去の実績報告が中心の「過去志向」になります。株主・投資家への公平な情報提供を最優先し、情報不足による株価下落や批判リスクを回避することに重きが置かれます。

一方、我々が提供するIRXの目的は、EPSとPERの双方から持続的に「企業価値を高める」ことです。そのため、コミュニケーションは常に未来の成長戦略を語る「未来志向」となります。これは単なるリスク回避ではなく、長期的な経営戦略を支持する投資家層を形成し、資本コストの低減と持続的な成長を加速させるための「攻めのIR」です。

栗原:攻めと守りのIRを両立する、「両利きのIR」とも言えますね。
長谷川:まさにそうですね。2つ目は「役割と経営への関与」です。従来、IR担当者は開示作業や問い合わせ対応を担う「事務局」という位置づけでした。経営からの指示を待つ受け身の姿勢になりがちで、経営戦略との連動性は低い傾向にありました。
IRXでは、IR担当者は資本市場の声を経営にフィードバックし、価値創造のPDCAを主導する「戦略ハブ」へと進化するべきだと考えます。市場や投資家の声を経営陣に届け、戦略策定の段階から深く関与する、いわば「経営の参謀役」です。
3つ目は「連携とコミュニケーション」です。大企業ではIR、PR、事業部門がそれぞれ独自に発信を行い、メッセージが分散する「サイロ化」が課題でした。これにより、届けられるメッセージがバラバラになり、経営陣の意図が正しく伝わらないという事態が生じます。
IRXでは、IRがハブとなり、経営視点で統一したメッセージを設計し、全社を横断した「統合的なコミュニケーション」を実現します。これにより、財務情報だけでなく、ESGや人材戦略といった非財務情報も含め、すべてのステークホルダーに一貫性のある価値創造ストーリーを届けることが可能になります。

4つ目は「支援スタイル」です。従来型のIR支援は、決算説明資料の作成や説明会の運営といった「実務オペレーション支援」が中心でした。
それに対し、我々が提供するIRXは、課題分析から戦略設計、ストーリー構築、実行、効果検証まで、企業価値創造のサイクル全般を一貫して支援する「戦略策定からの伴走支援」です。
栗原:この比較で従来のIRとの違いが明確ですね。では、このような「攻めのIR」に取り組むことで、企業経営はどのように変容するのか、この後お聞きできればと思います。