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AIは空気を読まない、経営者は「変曲点」を読め──山口周氏と語る、これからのリーダーに求められる条件

ゲスト:独立研究者 山口周氏、株式会社ログラス 代表取締役 執行役員CEO 布川友也氏

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AIが「空気を読まないこと」の価値

布川:まさにおっしゃるとおりだと思います。特に、先ほどお話しされていた「人間に残されている仕事は論点設定、仮説構築、実行」という話は強く共感しますね。ログラスが「Loglass AI Agents」で狙っている領域も、まさにそこです。

 経営の意思決定のプロセスで言い換えると、現状では多くの企業で、現場が意思決定の土台になるデータを収集し、経営企画やFP&Aなどの中間部門がデータを分析・統合・レポーティングして、経営層が意思決定を行います。Loglass AI Agentsでは、このプロセスにおける現場のデータ収集や中間部門による分析や統合の活動を支援するつもりです。

 もちろん「データの収集」といっても、単に社内で数値化されたデータを集めるだけでなく、いわゆるコンテクストに当たる定性情報までデータとしてすくい上げ、分析やレポーティングに活用する仕組みを目指しています。これによって、たとえば、予算策定で「なぜこの部門の予算がこの額なのか」を説明する背景情報まで補足したレポートが作成できます。

山口:たとえば、そうした予算策定のプロセスにおいて、特に自動化しやすいのは、どの領域だとお考えですか。

布川:やはり中間部門の分析やレポーティングの活動だと思います。売上や利益の目標設定や、その達成のために各事業部がどのような戦略を実行するかは、おそらくこの先も人間が考える必要があります。しかし、現状は経営企画をはじめとした中間部門が行っている、市場予測やそれをもとにした予算配分の活動は、ほぼAIで代替できるはずです。

山口:2019年にマッキンゼーが『マッキンゼー ホッケースティック戦略―成長戦略の策定と実行』(東洋経済新報社)という本を出しています。この本は要約すると「21世紀に大きく成長した企業は、衰退・成熟市場に割り当てていた資源を成長市場に大胆に振り替えている」と指摘しているのですが、これこそが本来、経営企画が担うべきコーポレートプランニングの活動です。

布川:おっしゃるとおりです。本来であれば中間部門は「この部門の予算を成長分野にアロケーションしよう」と積極的に提言できなければいけません。しかし、私の見る限り、組織が大きくなればなるほど大胆なアロケーションは難しくなるようです。

山口周

AIが浸透した先にある、「ジェネラリスト余剰問題」

山口:なるほど。だから、AIが役に立つわけですね。AIは空気を読みませんからね。

布川:そうなのです。AIに過剰にコンテクストを学習させてはいけない理由もそこにあります。「コンテクストを共有していないコンサルタントだから大胆な提言ができる」という理屈と同じですね。

山口:となると、AI時代には企業における経営企画の役割も変わりますね。経営企画人材のキャリアパスもおそらく変わります。

布川:長期的には、現在のような形の経営企画の業務は、時代とともに役割やスコープを変化させていく必要があると考えています。もちろん、ファイナンスや財務、IRなどの各領域の専門性はこれからも求められると思いますが、職種として求められるバリューの質が、集計から提言へと大きくシフトしていくのではないかと思います。多くの経営企画の方もこれを望んでおり、それがより実現しやすい世界になってきています。

山口:ただ、一方で悩ましいのは、経営者はジェネラリストでなければいけない。なぜなら専門分野だけでは組織全体を統括できません。しかし、経営者になれる人材は5年に1人くらい現れれば十分ですから、今の日本企業的な教育制度では「トップマネジメントのポストを得られていない高度なジェネラリスト」が組織内に滞留してしまう。それにもかかわらず、ジェネラリストの仕事は減っていくわけですから、組織の生産性向上と個人のキャリア形成という二つの側面から、課題があると言わざるを得ません。直ちには解決できない問題なのでしょうが、新卒採用や人材育成についても再考が迫られている時期なのでしょうね。

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「AIが仕事を奪う」という誤解

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社ログラス

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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