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デロイト トーマツ グループ、「役員報酬サーベイ(2025年度版)」の結果を発表

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 デロイト トーマツ グループは、役員報酬の水準や株式報酬制度などの導入状況、役員指名、コーポレート・ガバナンス領域も含めた中長期的な企業価値向上に資するトピックを調査した「役員報酬サーベイ(2025年度版)」の結果を発表した。

「役員報酬サーベイ(2025年度版)」の調査結果

CEO・社長報酬総額の推移

 2025年調査における売上高1兆円以上企業でのCEO・社長の報酬総額(中央値)は、123,900千円となった。2021年の98,602千円から25.7%増加し、過去最高額を記録(図1)。プライム上場企業について見ると、2025年のCEO・社長の報酬総額は75,173千円で、2022年の64,355千円から16.8%増となった。

 CEO・社長の報酬水準(標準額)を引き上げた137社の理由を見ると、「ベンチマーク企業の報酬水準上昇を踏まえた見直し」(64%)が最も多く、「業績状況を踏まえた水準の見直し」(28%)、「従業員報酬の賃上げに伴う水準の見直し」(26%)、「物価上昇による水準の見直し」(22%)が続いた。「ベンチマーク企業の報酬水準情報を踏まえた見直し」は前年から6ポイント、「従業員報酬の賃上げに伴う水準の見直し」および「物価上昇による水準の見直し」は前年からそれぞれ5ポイントの増加。パフォーマンスへの対価としてだけでなく、経済状況や従業員報酬とのバランスも考慮して報酬水準を見直す動きが徐々に拡大している。

図1:CEO・社長報酬総額の報酬水準推移(売上高1兆円以上企業 中央値)

報酬構成

 国内居住役員の報酬に、固定報酬、短期インセンティブ報酬、長期インセンティブ報酬の全ての報酬要素を含める企業は全体で64%(841社)、プライム上場企業で85%(572社)となった。短期および長期インセンティブ報酬の支給・付与があった企業についてCEO・社長の報酬構成(固定報酬:短期インセンティブ:長期インセンティブ)を見ると、全体では58%:26%:16%、売上高1兆円以上企業では47%:29%:24%。

インセンティブ報酬

 短期インセンティブ報酬を導入している企業の全体割合は76%(1,005社)で、前年(75%)と同水準、プライム上場企業における導入割合は91%(611社)。長期インセンティブ報酬を導入している企業の全体割合は80%(1,055社)で、こちらも前年(79%)から大きな変動は見られず、プライム上場企業における導入割合は93%(624社)であった。採用されている長期インセンティブ報酬の種類は「譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」が全回答企業の37%(492社)で最多。次いで「業績連動型株式交付信託」を採用している企業が15%(198社)となった。

 なお、従業員向けに長期インセンティブ報酬を導入している企業の全体割合は31%(409社)、導入を検討している企業は24%(319社)で、あわせて55%と全体の半数超え。前年の48%(614社)から7ポイントの増加となった。従業員エンゲージメントやファイナンシャル・ウェルネスを向上させる観点とともに、企業価値(株価)を従業員にも意識させることで経営陣と同じ方向を向かせる組織づくりが進んでいる。導入が多いスキームは、非上場企業を中心とした「通常型ストックオプション」が29%(120社)、上場企業を中心とした「株式交付信託(業績連動または非連動いずれか)」が26%(106社)、「譲渡制限付株式」が25%(104社)となっている。

業績指標

 トップエグゼクティブの報酬に採用されている指標は、「営業利益」が、短期インセンティブ報酬(44%)、長期インセンティブ報酬(38%)ともに最も多かった。短期インセンティブ報酬では「当期純利益」(28%)が続き、売上や利益をKPIとすることが引き続き主流となっている。長期インセンティブ報酬では、「ROE(自己資本利益率)」(29%)が続き、前年の24%から5ポイント増加した。「TSR(株主総利回り)」にみられる株主還元指標を採用する企業も、相対的にまだ数は少ないものの増加傾向にある(2023 年:5%、2024年:8%、2025年:9%)。「稼ぐ力」の強化が政府や投資家から求められていることに伴い、資本効率を意識したKPI採用は今後も増加していくと見られる。

 加えて、人的資本経営や気候変動に対する取り組み要請を受け、ESG指標を役員報酬に連動させる企業も、過去から持続的に増加。短期もしくは長期インセンティブ報酬のいずれかを導入し、それらの報酬にESG指標を組み込んでいる企業の割合は、プライム上場企業および売上高1兆円以上の企業で前年比いずれも4ポイント増となり、それぞれ27%、67%に達した(図2)。日本国内におけるサステナビリティ開示基準が2025年3月に策定されたことを受け、サステナビリティ目標に役員をコミットさせるため、役員報酬にESG指標を反映させる企業は今後も拡大していくことが見込まれる。採用が多いESG指標は「従業員エンゲージメント」110社、「CO2排出量」81社、「女性管理職比率」73社、「GHG排出量(Scope1,2)」67社と、従業員および気候関連指標が先行。

図2:役員報酬におけるESG指標の活用状況

社外取締役の質・量の確保

 コーポレート・ガバナンスの高度化を目指し、執行と監督を分離させていくことが政府や投資家から求められていることに伴い、監督を担う社外取締役の獲得が急務になっている。上場企業のうち、全取締役に占める社外取締役の人数割合が1/3以上の企業は91%(前年比+2ポイント)に及ぶものの、過半数を確保している上場企業は21%(前年比+2ポイント)にとどまる。プライム上場企業で見ても、社外取締役を過半数確保する企業は26%であり、取締役会がモニタリング・ボードとして機能するよう大手企業を中心にさらなる社外取締役の獲得が今後も続くと見られる。この背景を受け、優秀な社外取締役を獲得しようと報酬の上昇も目立っている。売上高1兆円以上企業における社外取締役の報酬総額水準は、中央値で15,180千円と、前年から2.6%の増加となった。

 社外取締役の獲得を円滑に進めるため、予め人材プールを形成しておくことは効果的だが、社外取締役の人材プールを確保している上場企業はまだ5%(54社)と前年同水準であった。しかし、人材プールの確保方法は変化が見られている。「CEO・社長からの推薦」が前年の80%から72%へ8ポイント低下する一方で、「社外取締役の推薦」は74%から78%へ4ポイント増加、サーチファームの利用も38%から43%へ5ポイント増加。CEO・社長に忖度なく企業を監督できるよう、社外者からの推薦を求める傾向が高まっている。

 また、多様性の確保が社外取締役の獲得競争を進める要因の一つにもなっている。日本政府は、プライム上場企業の女性役員比率を2030年までに30%とする目標を掲げている。しかし、女性取締役比率が30%以上のプライム上場企業はわずか9%。さらに、上場企業全体で見ると社内取締役の30%以上が女性である企業は3%であるのに対し、社外取締役の30%以上が女性である企業は54%(前年比+9ポイント)に及んだ。社外取締役の自社以外の兼務社数でも、男性は1.6社であるのに対し、女性は2.1社と多い。今後も多様性確保のため、この傾向は続くと見込まれる。社外取締役が複数社を兼務することに問題はないものの、女性社外取締役の兼務社数が過多となることで、社外取締役としてのパフォーマンスを十分に発揮できなくなることが懸念される。兼任制限の仕組みに加えて、社外取締役が自社の役員として十分に貢献できているか実効性評価などで確認していくことが求められる。

任意の報酬委員会、指名委員会、その他の委員会

 2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂に伴い、任意の報酬委員会、指名委員会の設置が継続して進んでいる。指名委員会等設置会社を除く上場企業のうち、任意の報酬委員会を設置している企業の割合は86%(958社)と前年より3ポイント増加し、任意の指名委員会を設置している企業の割合は81%(904社)と前年より2ポイント増加。このうち717社は任意の指名・報酬委員会であり、指名・報酬に関する機能を両方保有している。報酬および指名領域以外で企業が任意に設置する委員会として多く回答されたのは、リスクマネジメント/コンプライアンス委員会(73%)、サステナビリティ委員会(57%)だった。AIの普及・拡大によるサイバー攻撃対策や、2027年3月期より大手プライム上場企業を皮切りに適用されるサステナビリティ情報の法的開示に対応するため、今後もリスクマネジメント/コンプライアンス委員会、サステナビリティ委員会の設置の割合増加が見込まれる。

人的資本経営の取り組み

 人的資本に関する戦略ならびに指標・目標の開示が2023年3月期の有価証券報告書より求められるようになってから3年目を迎えた。戦略的に人的資本を活用し、企業の稼ぐ力の向上につなげられているかどうかは、投資家からの関心が依然高いテーマである。人的資本経営の取り組みもしくは検討を実施している(完了含む)企業の割合は73%(960社)で、2023年(61%)から12ポイント増加。着実に人的資本経営の取り組みが浸透していることがうかがえる。一方で、結果を上場区分別に見ると、取り組み状況には差が見られる。プライム上場企業は62%が既に取り組みを実施中または完了していると回答しているものの、スタンダード上場企業では38%、グロース上場企業は24%であり、検討段階にとどまる割合が大きい。限られた人員で事業運営する企業では、社員一人ひとりのスキルや能力を人的資本と捉えた上での育成・活用が企業価値向上の鍵となる。大手企業以上に成長や能力発揮のための環境整備等、人的資本経営への積極的な取り組みが求められる。

 人的資本経営の検討・取り組み内容は、「業務のデジタル化推進」(4.1点)や「時間や場所にとらわれない働き方の施策立案」(3.7点)、「ハイブリットワークの推進」(3.7点)、「人事制度と企業文化の連動」(3.7点)が先行する結果に(図3)。働き方改革や新型コロナウイルス感染症対策としてITを活用した働き方が普及したことに起因している。その他の項目について、前年から大きな変化は見られないものの、3カ年でレベル平均を比較すると着実に取り組みレベルが向上していることがわかる。プライム上場企業の取り組み状況について見ると、「社外での学習機会の戦略的提供、社内起業・出向企業等の支援」および「副業・兼業等の多様な働き方の推進」で2023年から0.4点の上昇が見られた。企業価値向上に寄与するイノベーション提案や、自社にない知見を獲得するための取り組みに力を入れてきたことがうかがえる。

図3:人的資本経営の具体的な検討状況(Level平均)

調査概要

  • 調査期間:2025年6月~ 7月
  • 調査目的:状況日本企業における役員報酬の水準、役員報酬制度やガバナンス体制、コーポレートガバナンス・コードへの対応などの現状に関する調査・分析
  • 参加企業数:1,319社(集計対象役員総数 23,969名)、上場企業1,140社(うちプライム上場企業673社)、非上場企業179社
  • 参加企業属性:製造業535社(うち医薬品・化学122社、電気機器・精密機器118社、機械82社など)、非製造業784社(うち情報・通信179社、サービス166社、卸売113社 など)

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