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日本企業発・イノベーションへの挑戦者

制度なし・業務外・自己資金で切り拓いた新規事業。日本製鉄発 小林氏が語る、事業化の「熱意」と「大義」

ゲスト:KAMAMESHI 小林俊氏

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 2025年5月に開催された「第二回 日本新規事業大賞」。オーディエンス賞に輝いたのは、日本製鉄発のKAMAMESHIだ。代表の小林俊氏は、社内に新規事業制度が整っていない中、自らの資金と時間を投じて事業を形にし、出向起業へと至った。 道なき道を切り拓く、その熱意の源泉はどこにあるのか。事業立ち上げの経緯と、事業を成長させるためのポイントを探る。

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“設備の老朽化”という製造業の見えざる課題に挑む

Biz/Zine編集部・梶川(以下、梶川):まず、これまでのキャリアについて教えてください。

小林俊氏(以下、小林):新卒で新日本製鐵(現:日本製鉄)に入社し、製鉄所で生産管理を担当しました。その後、本社に異動して営業や企画の経験を積み、さらに八幡製鉄所でのプロジェクトマネジメントやタイ駐在を経て、2023年8月に日本製鉄初となる出向起業に至りました。現在は、KAMAMESHIの代表取締役社長を務めています。

梶川:KAMAMESHIでは、どのようなサービスを提供しているのでしょうか。

小林:日本の製造業が抱える“設備の老朽化”という課題を解決するために、プラットフォーム「Kamameshi」を通じて大きく3つのサービスを展開しています。

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 1つ目は「部品調達プラットフォーム」。設備部品などを売買できる会員制のマーケットプレイスで、いわば「製造業版のメルカリ」のようなものです。

 2つ目は「社内在庫管理システム」です。社内在庫をデータで見える化することで、属人化しやすい予備品や資材の管理業務を効率化し、社内の情報共有もスムーズにします。

 さらに、そもそも設備保全の人手やスキルが足りない企業向けに、3つ目として「保全コンサルティング」も提供しており、設備技術の専門人材を派遣して現場のリスク調査から保全業務代行、人材育成までをサポートしています。

挑戦の起点は製造業と自社への“危機感”

梶川:「Kamameshi」は、製鉄業というよりも製造業全体を対象にしたサービスですね。検討し始めたきっかけを教えてください。

小林:「日本の製造業はどうあるべきか」をずっと考えてきたのが根っこにあります。

 大学時代に中小の製造業経営者へインタビューする機会があり、日本のモノづくりの強さを肌で感じました。しかし、日本製鉄に入社した後は、中国やインドなど海外勢の台頭もあって危機感を覚える場面が増えていったんです。

 中でも決定的だったのがコロナ禍です。日本の製造業が大きな打撃を受け、経営者が悩む姿を目の当たりにして、「復権のために自分にできることをやりたい」と強く思いました。

株式会社KAMAMESHI 代表取締役社長 小林俊氏
株式会社KAMAMESHI 代表取締役社長 小林俊氏

梶川:日本製鉄では当時、新規事業創出の仕組みが整っていなかったそうですが、それでも挑戦したのはなぜですか。

小林:その日本製鉄の風土自体も変えたかったんですよね。私は日本製鉄が大好きですが、大企業ゆえの新しい事を始める難しさや、挑戦しづらさには課題を感じていました。特にコロナ禍で若手社員の退職が相次いだときは、このままではマズいなと。

 ちょうど大企業でのオープンイノベーションや新規事業開発が世の中で広がり始めていたので、自分が挑戦することで会社に新しい風を吹かせることができるかもしれないと思いました。

 とはいえ、「新しいことをやりたい」というだけでは前に進みません。まずは事業づくりを学ぶことから始め、社内外で共感してくれる仲間を集めつつ、ONE JAPANの大企業挑戦者支援プログラム「CHANGE」や、経済産業省のイノベーター育成プログラム「始動」など社外活動を通して、事業構想を磨いていきました。

梶川:事業構想の段階で、設備の老朽化に着目するようになった経緯をお聞かせください。

小林:お客様へのヒアリングでいろいろな課題が挙がる中で、特に引っかかったんです。設備が止まれば立ち行かなくなり影響も大きいのですが、リスクの把握や対策に手が出ていない企業が多い。ここにビジネスチャンスがあるのではないかと考えました。

 同時に、日本の製造業を「同じ釜の飯を食う仲間」にしたいというビジョンにも合致すると感じました。日本の製造業は、地域や業種、系列を超えた横の連携にはしがらみが多いですが、世界で勝ち続けるには、1社で解決できない課題に横断的に取り組む必要があります。

 その入口として、製造業全体での設備保全を実現する仕組みは有効だろうと考えました。実際、災害やトラブルで設備が故障した際は、競合同士でも助け合う文化が日本には根付いています。その延長線上にある取り組みとしてなら、実現できる可能性が十分あると見込んだのです。

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業務外・自費でスタート。暗中模索の事業が日の目を見るまで

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この記事の著者

山田 奈緒美(ヤマダ ナオミ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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