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日本企業発・イノベーションへの挑戦者

制度なし・業務外・自己資金で切り拓いた新規事業。日本製鉄発 小林氏が語る、事業化の「熱意」と「大義」

ゲスト:KAMAMESHI 小林俊氏

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業務外・自費でスタート。暗中模索の事業が日の目を見るまで

梶川:社内の新規事業として正式に位置づけられてはいなかったとなると、本業と並行して進める形だったのでしょうか。

小林:その通りです。本業で頑張れない人間の言葉は響かないので、本業には120%で向き合っていました。そもそも本業とKAMAMESHIのお客様は重なる部分が多いですし、本業で日々お客様の理解を深めることが、そのままKAMAMESHIの解像度を上げることにつながると捉えていました。

梶川:つまり、完全に業務外の時間に取り組んでいたと。

小林:はい。日中は休憩も無いくらい忙しい日々だったので、平日の夜中や週末など、プライベートな時間はだいぶ削りましたね。協力をしてくれた家族にも本当に感謝しています。事業構想を磨くだけではなく、プロトタイプを開発してお客様に試してもらっては改善するというサイクルをひたすら繰り返していました。

梶川:資金はどのように調達されたのですか。

小林:資本金はすべて自分で用意して、初期の運転資金として2千万円を銀行から個人の連帯保証で借りました。今振り返ると、かなり思い切った決断だったと思います。

梶川:時間も資金も自分で投じるとなると、相当大変だったのではないでしょうか。

小林:最初は、挑戦を通して新たな学びを得られている感覚があって純粋に楽しかったですよ。むしろ苦しかったのは、手応えを感じ始めた後でした。お客様が「お金を支払ってでも利用したい」と言ってくれるようになったのに、日本製鉄の中で実現できる見込みは立っていない。そのギャップが本当につらくて。

 ただ、協力してくれた企業や支えてくれた仲間のためにも、「ここで諦めてはいけない」となんとか踏みとどまりました。

梶川:その後、事業化が本格化した転機は何だったのでしょうか。

小林:自分でできることはやり尽くしたと感じた段階で、覚悟を決めて橋本英二社長(現会長)に直談判したんです。

 結果的に事業の意義を理解していただき、「日本製鉄の社員としてがんばれ」と背中を押してもらえました。当時は、橋本社長が主導する社内改革の集大成として、人事改革に乗り出そうとしていたタイミングでもあったので、KAMAMESHIも象徴的な事例の1つになり得ると受け止めてもらえたのかもしれません。

 その後、多くの日本製鉄の社内関係者が協力してくださったおかげで、半年後には社内初の出向起業が実現していました。

出向起業で実感した“マネジメントと経営の違い”

梶川:社内で事業化という選択肢もあったかと思いますが、なぜ出向起業を選んだのですか。

小林:スタートアップのようなスピード感で動かない限り、事業を立ち上げられないと思ったからです。日本製鉄は事業計画のスパンも長く、投資額も巨大で、人の採用や事業連携にも慎重になりやすい。「始動」プログラムで触れたベンチャーマインドの、まさに対極に近いところがあります。その時間軸は失敗が許されない基幹産業では当然ですが、新規事業を立ち上げるのにはやはり向かないなと。

梶川:出向起業後の事業経過を教えてください。

小林:出向起業したのが2023年8月で、私とシステム開発を担う業務委託メンバーの2名体制でした。半年ほど経った2024年4月にサービスをローンチし、2025年12月時点では会員数は172事業所を超え、正社員を3名採用、業務委託を含めて約20名の規模になっています。

 業績面でも、売上は2期目を約4,800万円で着地し、進行中の3期目は1億円超えを見込むなど、なんとかオンスケジュールで事業と組織を拡大できている状態ですね。

梶川:出向起業にあたって、それまでの経験で生きたことや、逆に難しかったことは何ですか。

小林:物事を計画的に進めていく実行力や、製造業で働く人たちと向き合うコミュニケーション力、様々な部門・立場の人と関わりながら成果を出す組織統率力などは、事業を推進する上で役立ちました。

 一方で難しかったのは意思決定です。前提情報がきれいに揃っていることはまずなく、想定外の課題や問いが次々に出てくる。それでも決めないと前に進まない状況に最初は面喰らって、マネジメントと経営は「別の種目」だと痛感しましたね。

 だからこそ今では、自問自答し続けることを大切にしています。何のためにやるのか、何を優先するのか、自分なりに答えを出しておかないと決断できませんから。

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次世代の社内起業家を後押ししたい

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この記事の著者

山田 奈緒美(ヤマダ ナオミ)

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